明月記 元久元年
七月
二十八日。天晴る。早旦、殿下に参ず(夜部、行幸に御参り。坊門殿におはします)。御共して、五辻の新御所に向ふ(前大納言営み作る。来月八日に御渡り)。御覧じ廻す。午の時に還りおはします。途より和歌所に参ず。昨日の如く、家隆朝臣参会す(雅経殊に遅参)。大理櫃二合を取り寄せらる(銘、代々勅撰の上下)。破子、瓜、土器、酒等あり。又寒氷あり。大理自ら刀を取り、氷を削らる。入興甚し。納涼と雖も、外人無きにあらず。堪能と称して之を削る。白き布巾を以て、氷を裹みて、左手に之を扣く。皐陶の職、頗る軽々たり。各々饗応して之を食す。今日、夏の部を終ふ。七夕の歌、又之を書く。取り置きて退出す。夜に入りて帰る。
大理:通具
七月
二十八日。天晴る。早旦、殿下に参ず(夜部、行幸に御参り。坊門殿におはします)。御共して、五辻の新御所に向ふ(前大納言営み作る。来月八日に御渡り)。御覧じ廻す。午の時に還りおはします。途より和歌所に参ず。昨日の如く、家隆朝臣参会す(雅経殊に遅参)。大理櫃二合を取り寄せらる(銘、代々勅撰の上下)。破子、瓜、土器、酒等あり。又寒氷あり。大理自ら刀を取り、氷を削らる。入興甚し。納涼と雖も、外人無きにあらず。堪能と称して之を削る。白き布巾を以て、氷を裹みて、左手に之を扣く。皐陶の職、頗る軽々たり。各々饗応して之を食す。今日、夏の部を終ふ。七夕の歌、又之を書く。取り置きて退出す。夜に入りて帰る。
大理:通具