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うすくこき 宮内卿の歿年4 宮内卿の歿年と明月記の呼称

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5 宮内卿の歿年と明月記の呼称
宮内卿に関して、藤原の定家はその日記である明月記の中でどのように記載しているかと言うと、以下の通り有る。

正治二年三月十二日 八条殿(未の時許り)女房を尋ぬる所(【宮内】)退出すと云々。

正治二年十一月七日 歌合三首、評定了りて還りおはします。是より各々退出すべきの由、仰せ有り。ー略ー。題、紅葉梢に残る。寒夜の埋み火。海浜に夜を重ぬ。有家、今夜題を給はり、歌を献ず(里亭よりと云々)。今夜の歌皆以て負け了んぬ。御製一首、【師光が娘】一首(持)、伊勢の女房一首と云々。

建仁元年三月十六日 内大臣、権大納言藤原朝臣(後々に於ては姓を加へず。事々シキ故なり)、大弐(又姓を加へず。頗るマギラカス)、前権僧正(慈円、微音)、隆信朝臣、通具〃〃、保家〃〃、有家〃〃等、此の如し。左兵衛佐具親、右馬助家長、鴨長明(五位と雖もその身凡卑。仍て、六位に准じて之を読む)、寂蓮、但し書手(清範)に於ては、只抑へて公卿の名を書き、端には権大納言忠良、奥ザマニハ忠良ト書く。此の条然るべからざるか。女房に於ては、【宮内卿】、越前ト読む。御製ヲバ女房と書く(同じく読む)。入道殿は御名を書き、入道ト読み了んぬ。

建仁元年三月二十八日 大臣殿の御共して院に参ず。今日左右の和歌を撰せらる。申の時許りに出でおはします。仰せに依り、各々方の歌を撰す。左の方、弘御所の簾中に於て(簾を下ろす)撰せらると云々。大臣殿、内府、寂蓮、家隆朝臣と云々。右の方、御所に於て(北面)撰せらる。座主御前に候し給ふ。大弐之を読む。予、雅経少将等祗候す。作者を隠して(一巻に書き連ぬ)読み上ぐ。先づ合点す。次で、巻き返して合点す。歌を読み上げて重ねて、師点を合す。両点の歌、卅八首あり。又巻き返して、今度は作者を付く(合点の許に、之を付く)。御製甚だ多し。自余多少各々入る。権大納言、兼宗中将等其の中に漏る。仰せて云ふ、作者各々一首は必ず入るべし。御製を出すべし。巨多見苦しき事なりと。人々然るべからざる由を申す。重ねて評定す。良々久しく諍ひ申す。遂に御定了んぬ。卅六首を撰び定めらる。毎題の員数を知らず。只十題の内、卅六首なり。愚詠今度多く御意に叶ふと云々。面目身に過ぎたる者なり。大略。
御製七、座主六、権大納言一、兼宗中納言一、宰相中将(公経)三、大弐二、予五、雅経三、具親一、家長一、女房【宮内卿】三、讃岐一、丹後二。

建仁三年正月十五日 雅経、具親、予、家隆病みて参ぜず、俊ー卿女、【宮内卿】、越前。御製講師兼宗卿、講師(長房)、読師(大相国)。

建仁三年八月十四日 九十の賀の屏風歌、今日、詠信すべき由、夜中に重ねて仰せらる。ー略ー今度の作者は、親定(御製)、殿下、大僧正、有家朝臣、定家、雅経、讃岐、丹後、【宮内卿】、俊成卿女。
ー俊成九十賀屏風和歌ー

元久二年十一月二十六日 八条院宮内卿の局の宿所に行き向ふ。
(源家俊室)

承元元年(建永二年)五月十日 【宮内卿の局】、昨日逝去。常に馴るゝ人なり。甚だ悲し。近習の奏事容易く達す。心操甚だ柔和。

承元元年(1207年)五月十日の条に『宮内卿の局』とあって、「昨日逝去」と有る。逝去と記載されているのに、宮内卿の歿年が不詳とされているのは何故だろうか?
当時、宮内卿とする者が三人いる。
一人目は、後鳥羽院宮内卿で「師光が娘」と最初は記していたが、女房名の宮内卿と新古今和歌集の表記と同じくなる。
ややこしいのは、八条院にも宮内卿と称する女房(源家俊室)がいて、定家は、姉の八条院三条(俊成女の母)、八条院権中納言(延寿御前)、八条院按察、たまきはるの作者と目されている建春門院中納言(健御前)が八条院に仕えていて、八条院の家司(姉の小間使)をしており、正治二年三月十二日と元久二年十一月二十六日はこの八条院の宮内卿を訪ねている。
又、藤原家隆は、元久三年に宮内卿となっており、明月記も建永元年八月十五日宮内卿と記載されている。
この明月記の宮内卿表記を誰にするかと

稲村 榮一(訓注明月記 松江今井書店発行) によれば、後鳥羽院宮内卿としている。

後鳥羽院御集によれば、建仁三年八月十五日に「八月十五夜和歌所当座五首」とあり、明月記の参加と当日題が出され出席が必須の歌会であるので、当日宮内卿も参加したかも知れない。

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