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家長日記 俊成九十賀歌

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源家長日記
俊成九十賀

御遊終りて、和歌を置く。
               御製
百歳の近づく杖の世々の跡に越えても見ゆる老いの坂かな
               参議左大弁
今日に逢ひて花咲く松なほもまた君ぞ千歳のしるべなりける
               釈阿
百歳も過ぎ行く人ぞ多からむ万代ふべき君が御代には

万代のためしを君に始めてもあかぬ心に祝ふ今日かな

行く末の齢は心君が経む千歳を松の蔭に隠れて
               摂政左大臣
百歳に十歳及ばぬ苔の袖今日の心や包みかねぬる
               太政大臣
老いが代に千代経む君を待ちつけて昔の袖や身に余るらむ
               大納言(通資)
動き無き藐姑射の山の御蔭にて千代の友となるぞ嬉しき
               権大納言(隆房)
九十ぢの齢を君に譲りてもなほ春秋にとみ草の花
               中納言(兼宗)
君が経む千代のしるべの九十ぢかつ/"\これも見るぞ嬉しき
               権中納言(公経)
ためしとて群れゐる鶴の声ながら遥かに限る君が御代かな
               権中納言(範光)
限り無き藐姑射の山の蔭ならば千歳の坂もなほ越えぬべし
               右近中将(通光)
数ふれば三十ぢも三つに鳴海潟なほ波立ため君が千代まで
               参議(通具)
数へつる君が八千代の蔭なればなほ九十ぢ又も逢ひ見む
               正三位経家
和歌の浦に寄る年なみも数へ知る御代ぞ嬉しき老いらくのため
               従三位成家
九十ぢ満つを見るだに嬉しきに君が八千代を思ひやるかな
               有家朝臣
老いらくの栄ゆく道を照らすなり藐姑射の山の峯の月影
               定家の朝臣
君に今日十歳の数を譲り置きて九返りの万代や経む
               経通の朝臣
古りにける松もかひある常磐山千代に千代添ふ君が御蔭に
               頼房朝臣
君が代に松の千歳もかくぞあらむ古木の花は今日咲きにけり
               雅経
君が代に昔に返る老いの波なほ行く末も和歌の浦風
               具親
君が経む千歳の坂を待つ人の鳩の杖をばつくにぞ有りける
               家長
浜千鳥跡あることの絶えぬ世に生けるかひをば今日や拾はむ
               鴨長明
久方の雲に栄ゆく古き跡をなほ分け上る末ぞ遥けき()

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