ふるゆきにいろまどはせる
うめの
はな
うぐひすのみや
わけてしのばむ
おそくとくついにさきぬるうめの花
たがうへおきし
たねにか
あるらむ
もゝしきにかはらぬものは
うめのはなをりて
かざせる
にほひ
なりけり
新古今和歌集巻第十六 雑歌上
梅
菅贈太政大臣
降る雪に色まどはせる梅の花うぐひすのみやわきてしのばむ
枇杷左大臣の大臣になりて侍りける慶び申すとて
梅を折りて
貞信公
遲くとくつひに咲きぬる梅の花たが植ゑ置きし種にかあるらむ
延長の頃ほひ五位蔵人に侍りけるを離れ侍りて朱
雀院承平八年また還りなりてあくる年睦月に御遊
び侍りける日梅の花を折りてよみ侍りける
源公忠朝臣
百敷にかはらぬものは梅の花折りてかざせる匂いなりけり
読み:
ふるゆきにいろまどわせるうめのはな
うぐひすのみやわけてしのばむ
おそくとくついにさきぬるうめのはな
たがうえおきしたねにかあるらむ
ももしきにかわらぬものはうめのはな
おりてかざせるにおいなりけり
備考
菅贈太政大臣:菅原道真
契沖は、雪=小人、梅=君子、鴬=賢者と見る。
貞信公:藤原忠平
枇杷左大臣:藤原仲平で忠平の同母兄。承平三年(933年)右大臣に任じられ、弟より出世が遅れていた。
大和物語百二十段
承平八年は、延長八年(930年)の間違い。
百敷=禁中
平成28年9月17日 點伍