いろかをばおもひもいれず
うめのはな
つねならぬよに
よそへてぞ見る
うめのはななにゝほふらむ見る人
いろをもかをもわすれ
ぬるよに
はるがすみたなびきわたるをりにこそ
かゝる山辺はかひもありけり
梅の花を見給ひて
花山院御歌
色香をば思ひも入れず梅の花常ならぬ世によそへてぞ見る
上東門院世を背き給ひにける春庭の香梅を見侍
りて
大弐三位
梅の花なに匂ふらむ見る人の色をも香をもわすれぬ世に
東三条院女御におはしける時円融帝常に渡り給
ひけるを聞き侍りて靫負の命婦がもとにつかは
湿気る
東三条入道前摂政太政大臣
春霞たなびきわたる折にこそかかる山辺はかひもありけれ
備考:
花山院歌:和漢朗詠集、古今著聞集
東三条入道前摂政太政大臣:藤原兼家
東三条院女御:藤原詮子
かひ:峡、甲斐の懸詞
平成28年9月17日 點伍