百人一首改観抄 契沖
○中納言兼輔みかのはらわきてながるゝ泉川いつみきとてかこひしかるらん
新古今集恋一題しらすと有。家集にはなし。六帖 㐧三川題に兼輔とて
よそにのみ聞ましものを音羽川わたるとなしにみなれ初けん といふ古今集恋五の哥有て其哥より㐧九首に あたりて此哥あり。其間にある七首皆よみ人不知 哥なり。世の中はなそ大和なるみなれ川といふ 哥もあり、それを新勅撰雑四によみ人しらず とて入られたり。今こゝの哥より下に同し 題の哥つゝきて廿首合て廿九首、廿首の中に は万葉集の哥もまじれり。しかれは音羽川の
哥のみ兼輔卿にて其余はよみ人しらす也。六帖 はかく作者をしるす事のたしかならぬにより 集ともに六帖よりとりていれられたるには まとはれたる事多し。されは此哥もよみ人 しらすなるを新古今集にあやまりて兼輔卿 の哥とて入られたるを今はそれにより給へる也。 三香原 泉川ともに山城國相樂郡にあり。大意は 諸抄にくはし 泉川の由緒は日本紀崇神天皇十 年秋九月官軍進到輪韓河。埴安彦挟河屯之各 相挑焉。故時人改号其河曰挑河。今謂泉河訛也。
万葉集㐧十七に 楯並而伊豆美乃河波乃水緒多要受都可倍 麻都良牟
とよめるそのこゝろなり。
○中納言兼輔みかのはらわきてながるゝ泉川いつみきとてかこひしかるらん
新古今集恋一題しらすと有。家集にはなし。六帖 㐧三川題に兼輔とて
よそにのみ聞ましものを音羽川わたるとなしにみなれ初けん といふ古今集恋五の哥有て其哥より㐧九首に あたりて此哥あり。其間にある七首皆よみ人不知 哥なり。世の中はなそ大和なるみなれ川といふ 哥もあり、それを新勅撰雑四によみ人しらず とて入られたり。今こゝの哥より下に同し 題の哥つゝきて廿首合て廿九首、廿首の中に は万葉集の哥もまじれり。しかれは音羽川の
哥のみ兼輔卿にて其余はよみ人しらす也。六帖 はかく作者をしるす事のたしかならぬにより 集ともに六帖よりとりていれられたるには まとはれたる事多し。されは此哥もよみ人 しらすなるを新古今集にあやまりて兼輔卿 の哥とて入られたるを今はそれにより給へる也。 三香原 泉川ともに山城國相樂郡にあり。大意は 諸抄にくはし 泉川の由緒は日本紀崇神天皇十 年秋九月官軍進到輪韓河。埴安彦挟河屯之各 相挑焉。故時人改号其河曰挑河。今謂泉河訛也。
万葉集㐧十七に 楯並而伊豆美乃河波乃水緒多要受都可倍 麻都良牟
とよめるそのこゝろなり。