猪苗代兼載 兼載雑談
一、富士の山は、神代より出でたる山と皆人心得たる。わろし。神武天皇の御時、六月一日に一夜に湧き出したる山なり。普廣院殿、富士御下向の時、今川範政 君がみむけふの為にや神代より残りはじめしふじの白雪此のうた、諸家に難あり。一、西行歌に、 松にはふまさきの葛散りにけり外山の秋は風すさぶらむこの歌は、深山にて外をおもひやりたる歌なり。 見るまゝに山風あらく衣引く一、慈鎮、西行などは歌よみ。其の外はうた作りなりと定家の被書たる物にあり。 樒つむあかのをしきのふちなくば何に霰の玉たまらまし
※松にはふ新古今和歌集巻第五 秋歌下 題しらず 西行法師松にはふ正木のかづら散りにけり外山の秋は風すさぶらむ