絵入自讚歌註 宗祇
寂蓮法師 今はとてたのむの鳫もうちわびぬ おぼろ月夜の明ぼのゝそら
心は春の明ぼのゝかすみわたりて月は夕かなきかにて山のはたえ/"\しき折しも我こゝろも一かたならずあはれすゝみたるおりしも鳫のうちわびてやすらひかちに過るをかゝる折ふし立かへりがたきをさだまれるならひあれば今はとてうちわびて行よと鳫に心をつけたるにや。六百番春明ぼのゝ哥數〃侍る中にもこれやすぐれたると申べからん。
かつらぎやたかまのさくらさきにけり たつたのおくのにかゝるしら雲これは三躰の春の哥也。まことにたけたかきすがたなり。心は當意即妙や後鳥羽院も此うたをば
ことにいかめしくおぼしけるにや。 ものおもふ袖よりつゆやならひけむ 秋かぜふけばたえぬものとは秌の風あはれふかきころ物おもふ袖もたえがたきや木草の露もたえずくだけゆくをみて露も我より秋のかなしみをやならひけんといへるよし也。 ちりにけりあはれうらみの誰なれば はなのあととふはるの山かぜ此哥正廣あらぬやうに申けるとぞ。おぼつかなし。心はたゞ花ちりはてゝ物ふかき木のもとなどへ山風の又尋きてうちをとづれたる花の跡をうら
寂蓮法師 今はとてたのむの鳫もうちわびぬ おぼろ月夜の明ぼのゝそら
心は春の明ぼのゝかすみわたりて月は夕かなきかにて山のはたえ/"\しき折しも我こゝろも一かたならずあはれすゝみたるおりしも鳫のうちわびてやすらひかちに過るをかゝる折ふし立かへりがたきをさだまれるならひあれば今はとてうちわびて行よと鳫に心をつけたるにや。六百番春明ぼのゝ哥數〃侍る中にもこれやすぐれたると申べからん。
かつらぎやたかまのさくらさきにけり たつたのおくのにかゝるしら雲これは三躰の春の哥也。まことにたけたかきすがたなり。心は當意即妙や後鳥羽院も此うたをば
ことにいかめしくおぼしけるにや。 ものおもふ袖よりつゆやならひけむ 秋かぜふけばたえぬものとは秌の風あはれふかきころ物おもふ袖もたえがたきや木草の露もたえずくだけゆくをみて露も我より秋のかなしみをやならひけんといへるよし也。 ちりにけりあはれうらみの誰なれば はなのあととふはるの山かぜ此哥正廣あらぬやうに申けるとぞ。おぼつかなし。心はたゞ花ちりはてゝ物ふかき木のもとなどへ山風の又尋きてうちをとづれたる花の跡をうら