Quantcast
Channel: 新古今和歌集の部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4196

美濃の家づと 巻の一 夏歌3

$
0
0

百首歌奉りし時   式子内親王

聲はして雲路にむせぶほとゝぎすなみだやそゝぐよひの村雨

本歌√こゑはしてなみだはみえぬほとゝぎす云々。

 このうたにては、初句のは°もじは、こゝろなし。

たゞ本哥の詞によれるなり。 雲路、むら

雨によせあり。 むせぶは、なみだのむせぶ

にてむせぶほとゝぎすのなみだといふつゞきなり。

 一首の意は、本哥には、涙は見えぬとあれ共

此むら雨は、其涙のそゝぐにやあらんと也。

千五百番哥合に  権中納言公經

ほとゝぎす猶うとまれぬ心哉ながなくさとのよその夕暮

本哥√ほとゝぎすながなく里のあまたあれば云々

猶うとまれぬのぬ°は、いはゆる畢ぬ°なるを、此哥にては、不の意

に用ひかへたり。 下句は、ながなくさとのあまた有て、よそ

になけどもの意なり。

題しらず        西行

きかずともこゝをせにせんほとゝぎす山田のはらの杉のむら立

二の句せ°は、恋しきせうれしきせなどのせ°にて、こゝを聞べ

き跡にせんといふ意也。 詮也といふは誤なり。俗言にこゝを

せんどゝいふも、詮にはあらず。せにとゝいふを、音便にせんどゝいふ也。

郭公ふかき峯より出にけり外山のすそに聲のおちくる

けりは、おしはかりたるけり也。 深き峯よりといへる。何の用

ぞや。峯よりとは、猶いひもすべきを、深きとさへいへる。淺き

峯より出たる時鳥は、聲のおちこぬものにや。俊成卿のいたく

ほめられたるは心得ず。

山家暁郭公    後德大寺左大臣

をざゝふくしづのまろやのかりの戸を明がたになくほとゝぎす哉

詞めでたし。 させるふしもなきうたなり。

五首ノ歌人〃によませ侍ける時夏のうた

         摂政

うちしめりあやめぞかをる時鳥なくやさ月のあめの夕暮

すべて物のにほひは、しめればまさるものなり。


述懐百首に      俊成卿

今日はまたあやめのねさへかけそへてみだれぞまさる袖の白玉

二の句ねは、根に涙をかねたり。涙をねといふ也。 白玉は涙に

て、薬玉をかねたり。 けふは又といひ、そへてといひ、まさると

いへるにて、常に涙のかゝるをしられたり。 よくとゝのひたる哥也。

釋阿に九十ノ賀たまはせける時の屏風に五月雨

小山田に引しめなはのうちはへてくちやしぬらん五月雨の比

うちはへては、ひたすらになどいはむが如し。それをしめなは

引はへたるよりいひかけたるなり。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4196

Trending Articles





<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>