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尾張廼家苞 羇旅歌9
尾張廼家苞 三 の深きを見よといへるにて、例の紅の涙也。下句は此袖の色に くらぶれば、木〃の梢のもみぢしたる色はいと浅りけりと云 事を、しぐれざりけりといへる也。よく説えられたり。一首の意、立田山を 秋ごろ行人の袖の色をみよ。袖のあはれ、 に血のなみだをおとしてみなくれなゐ也。木〃の梢もよほど染...
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入道前関白右大臣に侍ける時百首哥に郭公 むかしおもふ草の庵のよるの雨になみだなそへそ山ほとゝぎす めでたし。上句詞めでたし。初句は、世に在し昔をおもふ 也。二三の句は、白樂天が詩の句によれり。よるの雨に涙なそへそ、 面白し。此歌、ふるき註共皆ひがごとなり。 雨そゝぐ花たちばなに風すぎて山ほとゝぎす雲になくなり 結句、雲は雨によせはあれども、なくてあらまほし。すべてこの哥...
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百首歌奉りし時 式子内親王 聲はして雲路にむせぶほとゝぎすなみだやそゝぐよひの村雨 本歌√こゑはしてなみだはみえぬほとゝぎす云々。 このうたにては、初句のは°もじは、こゝろなし。 たゞ本哥の詞によれるなり。 雲路、むら 雨によせあり。 むせぶは、なみだのむせぶ にてむせぶほとゝぎすのなみだといふつゞきなり。 一首の意は、本哥には、涙は見えぬとあれ共 此むら雨は、其涙のそゝぐにやあらんと也。...
View Article尾張廼家苞 恋歌一1
尾張廼家苞 四之上 尾張廼家苞四 新古今集 恋歌一 和歌所歌合に久忍戀 摂政 いそのかみふるの神杉ふりぬれお色にはいでず露もしぐれも 結句は露にも時雨にもの意也。されば三ノ句は年をへて ふるくなりたる意にて、(年を歴る意也。舊く なるとはこと事なり。)つゆしぐれ の方は詞の縁のみ也。露もしぐれもふりぬれどゝつゝく心に...
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尾張廼家苞 四之上 心なりけり。(此古歌と初二句は全くおなじけれど、其同じきはたま/\ にて、すべて相あづからず。此歌は本哥をとりし歌にあらず。) 上句に此本歌のすべての意をこめてよませ給へるなる べし(すべて本歌は、きはやかなる詞をとる 事也。かくむづかしきとりやうはなし。)さればたゞあらまし とは、本歌のなれぬる物は心なりといへるによれり。(むづかし...
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百首ノ哥よませ侍けるに 入道前関白太政大臣 五月雨はおうの河原のまこも草からでやなみの下にくちなん おうの河原とは、万葉三に、飫宇(オウノ)海の河原の千鳥云々。とある 所をよみ玉へるなるべし。出雲ノ国なり。 五月雨 定家朝臣 玉ぼこの道ゆき人のことづてもたえてほどふるさみだれの空 上句古歌をとられたれど、何の詮も見えず。さみだれに 似つかはしからず聞ゆ。 五十首ノ哥奉りし時...
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尾張廼家苞 四之上 (たよりなきほどに、我ためにしるべ して、此思ひをしらせてくれよと也。) 和歌所哥合に忍恋 摂政難波人いかなるえにかくちはてんあふ事なみにみをつくしつゝ 二三の句、江を縁のこゝろにとりて、終にいかなる縁にか朽 はてんとなり。(くつるとは、みをつくしの 縁にて死る事なり。)初句は、江と云、浪といひ、みをつくし...
View Article美濃の家づと 巻の一 夏歌5
だいしらず 俊成卿女 たち花の匂ふあたりのうたゝねは夢も昔の袖の香ぞする 家隆朝臣 ことしより花さきそむる立花のいかで昔の香にほふらん 守覚法親王ノ家ノ五十首ノ哥に 定家朝臣 夕ぐれはいづれの雲のなごりとて花たちばなに風のふくらむ 二三の句は後撰に、√故郷に君はいづらとまちとはばいづれの空の 霞といはまし。又源氏物語夕㒵巻に、√見し人の煙を雲...
View Article歌論 無名抄 不可立哥仙教訓事
不可立哥仙之申教訓事 おなじ人つねにをしへて云。あなかしこ/\哥よみ なたて給そ。哥はよく心ずべき道なり。われらがごと くあるべきほどさだまりぬる物はいかなるふるまいを すれどもろれによりて身のはふる(る)ごとはなし。 そこなどは重代の家にむまれてはやくみなし子に なれり。人こそもちゐずとも心ばかりはおもふ所ありて 身をたてんとほねばるべきなり。しかあるを哥の道...
View Article尾張廼家苞 恋歌二1
尾張廼家苞 四之上 戀歌二 五十首ノ歌奉りしに寄雲恋 俊成卿女 下もえにおもひ消なん烟だに跡なき雲のはてぞかなしき 上二句は煙の縁にて、忍ぶ恋にこひしぬる意。烟はなき跡 のけぶり也。跡なき雲とは、いづれか煙のなれるともわか れず、なべての煙になりはてゝ、烟は跡もなくなれるを云。一首 の意は,此世にて思ふ人にもしられず,いたづらに消るのみならず,...
View Article美濃の家づと 巻の一 夏歌6
式子内親王 まどちかき竹の葉すさぶ風の音にいとゞみじかきうたゝねの夢 朗詠に、風生竹夜窓間臥。 初句うたゝねによし有。 二の句すさぶといふ詞おもしろし。ひたすら吹にもあらず。をり をりそよめくさまにて、夏のよによくかなへり。よのつねならば、 そよぐとよむべきを、かくあるにて、殊にけしきあり。一言といへ ども、なほざりにはよむべからず。心を用ふべきわざなり。...
View Article尾張廼家苞 恋歌二2
尾張廼家苞 四之上 (を、下のこゝろをもらすとつゞきたる やうにて、すこしあかぬ所あり。) 左大将に侍ける時の家の百首歌合に忍恋 もらすなよ雲ゐが峰の初時雨木葉は下に色かはるとも (一首の意、雲ゐる嶺のはつ時雨のごとく、心の色がふかく なり行とも、必人にもらすなよと也。逢て後も忍ぶ恋也。)二ノ句に忍びかくす 意あり。(さまでも...
View Article美濃の家づと 巻の一 夏歌7
題しらず 西行 道のべにし水ながるゝ柳かげしばしとてこそ立どまりつれ しばしとおもひてこそ立どまりたるを、あまりすゞしさに、 えたちさらで、思はず時をうつしたることよと也。こそといひ、 つれといへるにて、その意見たり。 よられつる野もせの草のかぎろひて涼しくくもる夕立の空 下句詞めでたし。 初句は、夏の暑き日影に、草葉のよれ しゞみたるをいふ。...
View Article尾張廼家苞 恋歌二3
尾張廼家苞 四之上 泪の色のつひに紅になれるよしにて、涙の色のかは らぬほどは、しのぶれども、紅になりてはえしのびあへぬ意 なり。(一首の意は、物には際限がある物で、下のおもひを人にかくししのばう とするうちに、果には袖の上の露の色がくれなゐにかはりたりと也。) 二條院讃岐 うちはへてくるしき物は人めのみしのぶの浦の蜑のたく縄...
View Article美濃の家づと 巻の一 夏歌8
夏のうた 慈圓大僧正 雲まよふゆふべに秋をこめながら風もほにいでぬ荻の上かな こめながら、いうならぬ詞也。 風もの上か下かに、まだといふ 言あらまほし。 大神宮に奉り玉ひし夏の御哥の中に 太上天皇御製 山ざとの峯のあま雲とだえしてゆふべすゞしき槙の下露 千五百番哥合に 宮内卿 かたえさすをふのうらなし初秋になりもならずも風ぞ身にしむ...
View Article美濃の家づと 巻の一 真名序
勢海之濱拾文貝。害拾実否縷兮斐具。 十朋之珎得之帰者誰与。美濃大矢重門 従本居翁遊望天下褰裳濡足于此來。 翁勢人也。文富。重門嘗贏三月 糧之翁之所受新古今集明無解者。 乃討之翁曰先生雖倦勉為小子草之。 以貺於郷人。於是此書成矣。既而 郷人不秘観者噴々然称之。自有之参撰 無有若解者之得与古為徒。余暇日 勢海ノ浜ニ文貝ヲ拾フ。実ヲ拾フニ害フヤ否ヤ縷兮トシテ斐具ハル。...
View Article歌論 無名抄 俊頼歌傀儡云事
俊頼哥ヲクゞツウタフ事 ふけの入道殿に俊頼朝臣候ける日かゞみの くゞつどもまいりて哥つかうまつりけるにかみ哥なりて 世中はうき身にそへるかげなれや おもひすつれどはなれざりけり この哥をうたひいでたりければ俊頼いたり候 にけりなとてゐたりけるなんいみじかりける。永縁 僧正このことをつたえきゝてうらやみてびはほまし どもをかたらひさま/"\物とらせるとして我よみ...
View Article美濃の家づと 巻の二 秋歌上1
新古今和歌集美濃の家づと二の卷 秋歌上 百首哥の中に 家隆朝臣 きのふだにとはんと思ひし津の国の生田の杜に秋は來にけり 本歌√君すまばとはましものを云々。 何故にきのふだに とはんとおもひしにか、こゝろ得ず。 最勝四天王院の障子に高砂かきたる所 秀能 吹風の色社見えね高砂のをのへの松に秋は來にけり 上二句、√秋きぬとめにはさやかに見えねどもの意にて、風は...
View Article美濃の家づと 秋歌上4
顕昭 水ぐきの岡のくず葉も色づきてけさうらがなし秋の初風 めでたし。詞もすべてめでたし。 上句、万葉十に、√水ぐ きの岡のくず葉も色付にけり。 四の句は、後拾遺秋上、√まく ず原玉まく葛のうら風のうらがなしかる秋はきにけり。 うらは、葛の縁の詞なり。 越前 秋はたゞ心よりおく夕霧を袖のほかともおもひけるかな...
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