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美濃の家づと 巻の一 夏歌8

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夏のうた         慈圓大僧正

雲まよふゆふべに秋をこめながら風もほにいでぬ荻の上かな

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こめながら、いうならぬ詞也。 風もの上か下かに、まだといふ

言あらまほし。

大神宮に奉り玉ひし夏の御哥の中に

             太上天皇御製

山ざとの峯のあま雲とだえしてゆふべすゞしき槙の下露

千五百番哥合に      宮内卿

かたえさすをふのうらなし初秋になりもならずも風ぞ身にしむ

本哥√をふの浦にかたえさしおほひなる梨の云々。 かた

枝さしおほひたる陰なる故に、秋になりならざるの論な

く、夏の程よりして、風のいとすゞしきよし也。さてかた枝

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さすとのみにては、すゞしかるべきよしなけれども、本哥の

さしおほひといふ詞を、つゞめたるなれば、そのおほひと

いふに、すゞしきよりは有なり。

百首哥奉りし時      慈圓大僧正

夏衣かたへすゞしくなりぬなり夜やふけぬらん行合の空

本歌√夏と秋と行かふそらの通路は云々。 本哥とれる

詮なし。たゞ夏衣といへるのみ、かはれる、その夏衣も、縁の

詞だになければ、いたづらごとなり。又なりぬなりといふは、他の

うへを見聞ていふ詞にこそあれ。みづからのうへにはいかゞ。これ

はなりにけりとこそあるべけれ。すべて今の世の人は、かやうの

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けぢめをえわきまへざれば、たゞ同じこととぞ思ふらん。此

集の比はしも、猶かゝること、むげに分れざるに(ハ)あらざり

しがとも、あながちに詞をいうによまむと、つとめられたり

しから、かゝるたがひめは、をり/\あるなり。

 

 

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巻之一 了


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