俊頼哥ヲクゞツウタフ事 ふけの入道殿に俊頼朝臣候ける日かゞみの くゞつどもまいりて哥つかうまつりけるにかみ哥なりて 世中はうき身にそへるかげなれや おもひすつれどはなれざりけり この哥をうたひいでたりければ俊頼いたり候 にけりなとてゐたりけるなんいみじかりける。永縁
僧正このことをつたえきゝてうらやみてびはほまし どもをかたらひさま/"\物とらせるとして我よみ たるいつもはつねの心ちこそすれといふ哥をこゝかしこ にてうたはせければときの人ありがたきすき人と なんいひける。今のあつより入道又これをうらやまし くやおもひけん物もとらせずしてめくらともうた へ/\とせめうたはせて世の人にわらはれけりと。
※世の中は 金葉集二度本、三奏本 千載集 堀河院御時百首歌たてまつりける時 述懐のうたによみてたてまつり侍りける 俊頼 反歌
※いつもはつねの心ちこそすれ 金葉集初度本、二度本 永縁 聞くたびにめづらしければほととぎすいつもはつ音のここちこそすれ