だいしらず 七條院ノ権ノ大夫
秋來ぬと松吹風もしらせけりかならず荻の上葉ならねど
めでたし。下句詞めでたし。 かならずは、俗にあながち
といふ意なり。こは哥にはをさ/\よまぬ詞なるを、此哥に
にては、一首のまなことなりて、めでたし。
百首哥に 式子内親王
うた●ねの朝けの袖にかはるなりならす扇の秋のはつかぜ
七夕のうた 俊成卿
たなばたのとわたる舩のかぢのはにいく秋かきつ露の玉づさ
初二句は、題の事を、すなはち序にしたる也。 露の玉、梶
の葉に縁あり。 後拾遺に、√天川とわたる舩のかぢのはに云々。
守覚法親王家五十首哥に 顕昭
萩が花真袖にかけて高圓の尾上の宮にひれふるやたれ
詞はよし。 萩が花を袖にかけて、ひれふるといふうこと、
いと/\心得ず。万葉めきてよみたれど、すぢなきこと也。
千五百番歌合に 左近中将良平
夕されば玉ちるのべのをみなべし枕さだめぬ秋風ぞふく
下句めでたし。 露を玉ちるといへること、よせなく聞ゆ。
百首哥に 式子内親王