紫式部 号藤式部 上東門院女房 源氏物語作者
勧修寺元祖良門の末。中納言兼輔卿曽孫越前守
為時の女也。母摂津守為信の女也。右衛門佐信孝に
嫁して大弐三位を生り。河海抄云鷹司殿(御◯
殿北方從一位倫子左大臣雅信女)の官女なりし。◯◯て上東
門院に仕云云。紫式部と号する故は、袋草子云、紫式
部と云二説あり。一つは源氏物語の中に若紫の巻を
つくる◯称◯故この名を◯たり。一つは一乗院の
御乳母の子なり。上東門院に奉りしむとてわあかゆり
のもの也。
むさしのゝ◯也◯。一説云はじめ藤式部と云其
名幽玄ならずとて藤の花のゆかりに紫の字
にあらため◯るゝ云云。河海抄ゝゝ
めぐりあひてみしやそれともわかぬ間に雲隠れにしよはの月哉
新古今雑上。はやくよりわらは友だちに侍りける
人のとし比へて行あひたるがほのかにて七月十日
ころ月にきおひてかへり侍りければ云云
はやくよりとは昔時よりとの心なり。
このうたは√わするなよほどは雲井になりぬ
ともそらゆく月のめぐりあふまで。この哥
よりいでたる也。詞書にとし比へてゆきあひたる
といへるところこゝろをつくべし。哥のこゝろは久
しくほどへてあひたる人なればいまめぐりあ
ひてみしもそれがあらぬかおもひわかぬ間に
はやたをかへりたるを月の雲がくれたるに
なぞらへいづる也。◯◯きめぐりあひてといふより
かのそらゆく月のめぐりあふまでといつるをう
ふて雲がくれぬる月とよめるなり。御抄云雲
がくれノこと葉"いさゝかはゞかりあるべきこゝろあ
り。たゞしめ◯もあのばくるしからぬに也。
は斟酌あるべきこの◯ひなり。