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Channel: 新古今和歌集の部屋
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読癖入伊勢物語 六十八〜六十九段(2頁欠丁)

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六十九段 狩の使


らぎばかりにいきけり。かうちの国いこま山をみれば、くもりみはれ

み立ゐる雲やまず。朝よりくもりて、昼はれたり。雪いとしろう

木のすへにふりたり。それをもて、かのゆくへの中に、たゞ獨讀ける

きのふけふ雲の立まひかくろふは花の林をうしとなりけり。

六十八
むかし男いづみの国へいきけり。住吉のこほり、住吉の里、住吉のはま

をゆくに、いとおもしろければ、をりゐつゝ行。ある人住吉の濱とよめと云

鴈なきて菊の花さく秋はあれど春のうみべに住吉のはま

とよめりければ、みな人〃よまずなりにけり。

六十九
むかし男有けり。その男いせの国にかりのつかひにいきけるに、

かのいせの斎宮なりける人のおや、つねのつかいよりは、此人よく

いたはれといひやれりければ、親の事なりければ、いと念比にいた

わりけり。あしたには狩に出したてゝやり。ゆふさりはかへりつゝそ

こにこさせけり。かくて念比にいたづきけり。二日といふ夜、男われ


あはんといふ。女もはたいとあわじとも思へらず。されど人めしげる

れば、えあはず。つかひざねとある人なれば遠くもやどさず。女の

ねやもちかく宵ければ、女、人をしづめて、ねひとつばかりに、男の

もとにきたりけり。男はたねられざりければ、とのかたを見いだし

てふせるに、月のおぼろなるに、ちいさきわらはをさきに立て人た

てたり。男いとうれしくて、わがぬる所にゐて入て、ねひとつより丑みつ

まで有に、まだなに事もかたらはぬに、かへりにけり。男いとかなしく

て、ねずなりにけり。つとめていぶかしけれど、わが人をやるべきにしあ

らねば、いと心もとなくて待をれば、明はなれてしばしあるに、女の

もとよりことばはなくて、

古今
君やこしわれや行けんおもほえず夢かうつゝかねてかさめてか

男いといたうなきてよめる。

古今
かきくらす心のやみにまどひにき夢うつゝとは今宵さだめよ

 

以下 七十四段まで2頁欠丁。

七十二段 神の斎垣


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