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八雲御抄 正義部 六義事 蔵書

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八雲抄巻第一 正義部


六義事

一、風といふは、そへ哥也。物をものにそへ、よめる也。其

事をいはで、其心をさとらすといへり。

難波津にさくやこの花冬ごもり

今は春べとさくやこのはな

これは、仁德天皇の位をゆづりをえずして、難

波宮におはしますを、王仁がそへ、よめるなり。早可

有践祚といへる心なり。

二、賦は、かぞへ哥也。物にもたとへずして、いへり。

さく花におもひつくみのあぢきなく

身にいたづきのいるもしらずて

古今云、五たゞこと哥といへるなん。是にかなふ

べきとしるせり。

三、此は、なずらへ哥也。物になずらたる也。たとへば、

たとへたるといふも、おなじ事也。

君にけさあしたの霜におきていなば

こひしきごとにきえやわたらむ

古今には、此哥かなへりとも見えずとて、しらせる哥

たらちねのおやのかふこのまゆごもり

いぶせくもあるかいふもにあはずて

四、興は。たとへ歌也。

わがこひはよむともつきじ有磯海の

はまの真砂はよみつくすとも

古今に、そへ哥に同やうなれど、すこしさまをかへ

たりといへり。

すまのあまの塩やくけぶり風をいたみ

おもはぬかたにたなびきにけり

是をかなふべきと、古今にいへり。

五 雅は、たゞこと歌といへり。

いつはりのなき世なりせばいかばかり

人のことの葉うれしからまし

古今、是は、ことゝのほり、たゞしきをいふ也。

山ざくらあくまで色をみつるかな

花ちるべくも風ふかぬよに

これをかなふべきといへり。

六、頌はいはひ哥也。

このとのはむべもとみけりさき草の

みつばよつ葉にとのづくりせり

是はよをほめて、神につぐるなり。此哥、いはひ哥と

は見えずと、古今にいへり。

かすが野にわかなつみつゝよろづよを

いはふこゝろは神ぞしるらん

これやすこし、かなふべからん。

今案、貫之おほよそ、むくさにわかれんことは、えある

まじきことゝいへり。誠に六義に樣をかへん事は、

難分歟。但、それもやうにより、ことによるべき事也。

第六のいはひうたは、所詮、いづれもおなじことなれど、

いはふ心といへるは、いはふよしとおもへるか、むべもと

見けりは、いはひごとならでも、有ぬべし。仍如此。但、

それも、祝の心にてこそはあれば、たゞ同事也。

㐧五のたゞごと哥は、又二首、いくばくのかはりめあり

とも見えず。たとへ哥、なぞらへ哥、かぞへ哥などは、

又、いづれも、すこしのかはりめばかり也。大略同事の様

なること也。そへ哥は、是等にかはりたり。これらは、さるこ

とゝ心えるは、ふかき心、又あるべからず。近比も、哥の十

躰とて、品〃をたてたる物ありき。それもいはゞ、同樣

なることなれど、すこしのかはりめばかり也。哥の姿を

いはゞ、十躰よりもおほくかはりたる物なれど、いづれ

もたゞ同事也。靜に哥の樣をみば、誰も心得づべ

きことをなれば、子細を多く、注にをよはず、普通三十

一字、号反哥也。

 

※読めない部分は、国文研鵜飼文庫を参照した。

※難波津に 古今集仮名序歌。和漢朗詠集。王仁

※さく花に 古今集仮名序歌。拾遺集 物名 大伴黒主

※君にけさ 古今集仮名序歌。万葉集巻第十二 2991

※たらちねの 拾遺集 恋歌四 柿本人麻呂   

※わがこひは 古今集仮名序歌。

※すまのあまの 古今集 恋歌四 よみ人知らず。伊勢物語

※いつはりの 古今集仮名序歌。古今集 恋歌四 よみ人知らず

※山ざくら 続古今集 春歌下 平兼盛。和漢朗詠集 

※このとのは 古今集仮名序歌。催馬楽。

※かすが野に 古今集 賀歌 素性法師。


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