さんじつたづぬるりきうそう
三日尋李九荘 じやうけん 常 建 あめはやむやうりん 雨 歇 楊 林 とうとのほとり 東 渡 頭 ゑいくはさんじつ 永 和 三 日 うごかすけいしうを 盪 軽 舟 こじんのいゑはあり 故 人 家 在 とうくはのきしに 桃 花 岸 たゞちにいたるもんぜん 直 到 門 前 けいすいのながれに 渓 水 流 ゆふべまであめがふりしが、 今朝は、やなぎのある東 渡のほとりまではれ、 わたりらゆる今日はさいはい 三日ゆへ、むかし羲之が永 和年中に蘭亭にあそ びしごとくわれも、けいしうを こぎいだし、友だちの処を たづねてゆくである。 こじんの家はどこぞとおもふに、 むかふのもゝの花のさきづれた きしにあるから、この水に 舟をうかべゆけば、たゞちに 門前にいたりついて ふうけいをみれば、もの しづかにてぶりやうの とうげんきた やうなといふを もたせたる詩也。 くわしくは、こくじかいにあり。
三日、李九の荘を尋ぬる 常建 雨は歇(や)む、楊林、東渡の頭(ほと)り、 永和は三日(さんじつ)、軽舟を盪(うごか)す。 故人の家は、桃花の岸に在り。 直ちに門前の渓水の流れに到る。 意訳 雨は止んだばかりだ、楊林のある東渡の辺りは。 永和の三月三日に王羲之が蘭亭で宴を催した時と同じような穏やかな上巳の日だから、向かう小舟も軽やかに漕ぎ出す。 友人の家は、桃の花が咲く岸のあたりに在り、 あっと言う間に、門前への渓水の流れで到着した。 ※三日 三月三日の上巳の節句。 ※李九 不詳。 ※東渡の頭 東の渡の辺り。 ※永和 晋の王羲之が、永和九年の上巳の節句に、蘭亭において曲水の宴を催した例を踏まえ、その日のような穏やかな日。永く穏やかな日との意味を兼ねる。 唐詩選画本 七言絶句 巻第五