かうてき 髙適 きうきよくし 九曲詞 てつば おうかうす てつ 鐵馬横行鐵 れい とう 嶺頭 にしのかたみてらさをとる 西看邏逤取 ふうこうを 封侯 せいかいたゞいままさにす 青海只今將 みづかわんとうまに 飲馬 くはうが ずもちいさらに 黄河不用更 ふせぐことをあきを 防秋 われもなにとかな、功をたてやうとおもふて てつばのてつよきむまにのり、てつれい とうあたりを ろうやかたとかけまわり にしのかた、らさこくを目あてにして もしおごり、てむかふものも あらばうちいつて、そのくにをとり たいめうになぞふとおもふだに 青海あたりへゆきて、馬に水かわふと しても、胡のものが、かなわぬ太平 の御世なれば、黄河あたりへ秋を ふせいで中国へゑびすがいらねば、する こともない。すればこうをたつるすも ならぬざんねんである。 あきをふせぐというふは、ゑびすが中ごくへ いりこむきせつゆへせきしよをたてゝ ふせぐなり。
九曲詞 髙適 鉄馬横行す、鉄嶺頭。 西のかた邏逤(ラサ)を看て封侯を取る。 青海只今、将に馬飲(みずかわん)とす。 黄河用いず更に秋を防ぐことを。 意訳 唐軍の最強の騎兵は、思うままに、鉄嶺頭山まで進み、 西の方のチベットのラサの軍勢を見て、軍功を得ようとしている。 今こそ、青海湖で、将に馬に水を飲ませている。 これだけの軍勢が青海にいるので、黄河付近は、更に秋に来る胡の攻撃を防ぐことをしなくても済んでいる。 ※九曲詞 新楽府題。九曲は、青海省の東、化隆あたり。 ※鉄馬 武装した騎兵。 ※鉄嶺頭 北西の山の名前だが、不詳。 ※邏逤(ラサ) チベットの首都ラサ ※封侯 軍功で、侯の爵位に封じられる。 ※青海 青海省にある青海湖
唐詩選画本 七言絶句 巻第五