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五十首哥奉りし時 雅經
はかなしやさてもいく夜か行水に数かきわぶるをしのひとりね
めでたし。 三四の句、本哥√行水に数かくよりもはか
なきは思はぬ人をおもふ也けり。此下句の意にて、をしの
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ひとりねに、思はぬ人を思ふを、はかなしといへる也。 二の句は、
本哥のごとく、思はぬ人を思ふは、はかなき事なるを、さあ
りても猶いくよか、数かきわぶらんといふ意なり。
百首哥に 式子内親王
さむしろの夜はの衣手さえ/\て初雪白し岡のべの松
下句詞めでたし。 初句猶あるべし。 下句は、あくる
朝に、見わたしたるさまなり。
入道前関白右大臣に侍ける時家の哥合に雪
寂蓮
ふりそむるけさだに人のまたれつるみ山のさとの雪のゆふ暮
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初句、ふりそめしといはんかたまさるべし。 またれつるは、
さびしさに、人のまたれたる也。 まして降つもりたる夕
暮なれば、いよ/\さびしさに、またるゝ意あらは也。
古き抄に、ふりそむるを、初雪とし、結句をば、後の事として、
ふりそめたる日の夕暮にはあらずといへる葉、いみしきひがご
となり。けさとは、今日の朝をこそいへ。
雪のあした後徳大寺左大臣の許につかはしける
俊成卿
けふはもし君もやとふとながむればまだ跡もなき庭の白雪
かへし 後徳大寺左大臣
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今ぞきくこゝろは跡もなかりけり雪かきわけて思ひやれども
我は、そなたの庭の雪を、せちに思ひやれば、さだめてその
わが心の跡のつきたらんと思ふに、まだ跡もなしとは、今
こそうけ給はりつれ、さては心の跡は、つかぬ物にて侍り
けるよとなり。
百首哥奉りし時 定家朝臣
駒とめて袖打はらふ跡もなしさのゝわたりの雪の夕暮
いとめでたし。 万葉三に√くるしくもふりくる雨はみわ
が崎さのゝわたりに家もあらなくに。といふをとりて、その
くるしくもふりくるといへると、家もあらなくにといへるとを、袖
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うちはらふかげもなしとよみなされたる、一きはつよく、意
もせち也。其うへ夕暮とあれば、まして宿かるべき家の
なき意、詞の外にあり。 近き比、万葉風をのみ、ひたす
らたふとむ輩の、後の哥をば、しひていひおとさむと
て、此哥のこととかく論じたることあれど、かたおちのし
ひごとなり。袖うちはらふ陰もなしといへるに、くるしき心も、
家のなき心も、あくまでそなはりて、いと/\哀なる物をや
※くるしくも 万葉集巻第三 長奥麻呂 265
苦毛 零来雨可 神之崎 狭野乃渡尓 家裳不有国