万葉集略解
反歌
田兒之浦從.打出見者.真白衣.不盡能高嶺爾.雪者零
家留.
たごのうらゆ.うちでてみれば.ましろにぞ.ふじのたかねに.ゆきはふりける.
駿河の清見が先より東へ行ば、今薩埵坂といふ山の下渚
に昔の道あり。そこより向ひの伊豆の山の麓までの海、田兒の浦也。
右の岸陰の道を東へ打出れば、其入海越しに富士見ゆるとぞ。されば
田兒の浦より東へうち出て見ればといふう意にかくは詠めり。ゆは
よりといふう詞ながら、こゝはいとかろく意得るべし。何事もなけれども今
も見る如し。
万葉集略解 三上 橘千蔭著 寛政十二年(1800年)完成 国立国会図書館蔵 40コマ
江戸後期の、「万葉集」の注釈書。二〇巻三〇冊。橘千蔭著。寛政一二年(一八〇〇)成立。寛政八年(一七九六)から文化九年(一八一二)刊。師賀茂真淵はじめ本居宣長、契沖など先人の説を引用しながら全巻に簡略な注解をしており、簡便な入門書として広く流布した。