新古今桜さく
遠山鳥の
しだり おのなが/\ し 日も あかぬ色
かな
太上天皇
それ桜は本朝風土の名産なり。其種類凡六十九品ありとぞ。殊に洛東の地勢温鈍にして桜樹相應し清香他境に勝るゝなり。中華には桜樹ある事をきかず。むかしより桜花の詩賦なし。是其證なり。桜桃の桜の字をきりて桜の文字とす。今清朝の人長崎往來に桜の実を携て本国にかへり実生しところ/"\に鉢植などして賞美するよし聞ゆ。
新古今和歌集 巻第二春歌下
釋阿和歌所にて九十の賀し侍りしをり
屏風に山に櫻かきたるところを
太上天皇
さくら咲く遠山鳥のしだり尾のながながし日もあかぬ色かな
よみ:さくらさくとおやまどりのしだりおのながながしひもあかぬいろかな 選者無 隠
意味:遠くの山に咲く桜が、山鳥の垂れる尾のように長くなっていく春の日でも見飽きない景色のように、、貴方の歌は、歌聖人麿や紀貫之、友則のように見飽きることがありません。
作者:後鳥羽天皇ごとば1180~1239譲位後三代院政をしく。承久の変により隠岐に流される。多芸多才で、新古今和歌集の院宣を発し、撰者に撰ばせた後更に撰ぶ。
備考:柿本人麻呂と紀友則、紀貫之の本歌取り。建仁三年(1203)11月23日俊成が九十歳になった時に和歌所で祝賀会が開催され、屏風歌として歌われた。時代不同歌合、 八代抄、新三十六人歌合、美濃の家苞、常縁原撰本新古今和歌集聞書、新古今抜書抄、新古今注、九代抄、九代集抄、新古今和歌集抄出聞書(陽明文庫)
本歌:
足引の山鳥の尾のしだり尾のながながしよを一人かも寝む(拾遺集 柿本人麻呂)
わが心春の山辺にあくがれてながながし日を今日も暮らしつ(春歌上 紀貫之 私説)
春霞たなびく山のさくら花見れどもあかぬ君にもあるかな(古今集恋歌四 紀友則 私説)京都円山公園の桜