

湘江を渡る 杜審言
遅日園林昔遊を悲しむ 今春花鳥辺愁を作す 独り憐れむ京国人南竄せられ湘江の水北流するに似ざることを
意訳麗らかな春の日、園林を見ていると、昔はこんな日に長安の都で遊んだ事を思い出して悲しくなる。今春のここの花鳥を見ると、辺境へ向かう憂愁ばかり引き起こされる。長安の都出身の私は、独り憐れんでいる。南方のベトナムへ追放される身で、湘江の水が都の方角の北の洞庭湖へ向かって流れるのとは違って、南へ向かっている。しかも川の流れと同じく逆流はせず、もう長安に戻る事は無いだろう。
※杜審言 杜甫の祖父で、則天武后に召されたが、上司で引き立ててくれた張易之が殺された為に、ベトナムのフート省に左遷させられた。この詩は、そこへ向かう旅の途中、湘江を渡った時のもの。
※湘江 湖南省を流れ、洞庭湖に注ぐ延長856kmの大河。
※鼠 追放されると言う意味。
唐詩選畫本 七言絶句 巻一
