(ウェッブリブログ 2011年06月05日)
かがり火
行く方も知らぬ煙の闇に消え
昼は消えつつ
残る消しずみ
初雁
はつ雁の
雲井のよそに過ぎるなり
はつかに聞きしたよりなき身に
昔冗談で和歌を二首作った事があり、金沢の百万石祭の浅野川の燈籠流しで、篝火を見てふと思い出した。
篝火の本歌は、
百人一首の大中臣能宣
御垣守衛士の焚く火の夜は燃え昼は消えつつものこそ思へ
西行の新古今 雑歌中 1613
風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬ我が思ひかな
消の字を三つ重ねたという歌病の典型かと。
初雁の本歌は、
古今集 恋歌一 凡河内躬恒
初雁のはつかに声を聞きしより中空にのみ物を思ふかな
風雅集 源俊頼
初雁は雲井の余所に過ぎぬれどこゑは心にとまるなりけり
「はつ」を重ねているが、本歌もそうなっているので。
たよりは便りと頼りの掛詞。便りは雁書の故事により縁語。
浅野川は、金沢市を流れる川で、泉鏡花の生家も川端近くにあることから義血侠血や五木寛之も暫く住んだことから、浅の川暮色という小説の舞台となったそうです。