傷食の病あらば飲食をたつべし。或食をつねに半
減じ三分の二減ずべし。食傷の時はやく温湯
に浴すべし。魚鳥の肉魚鳥のひしほ生菜油
膩の物ねばき物こはき物もちたんごつくり菓
子生菓子などくらふべからず。
朝食いまだ消化せずんば昼食すべからず。点心など
くらふべからず。昼食いまだ消せずんば夜食すべからず。
前夜の宿食猶滞らば翌朝食すべからず。或半
減し酒肉をたつべし。およそ食傷を治する事飲
食をせざるにしくはなし。飲食をたてば輕症は薬を用
ずしていゆ。養生の道しらぬ人殊ニ婦人は智なく
して食滞の病にも早く食をすゝむる故病おも
くなる。ねばき米湯など殊に害となる。みだりに
すゝむべからず。病症により殊に食傷の病人は一
両日食せずしても害なし。邪氣とゞこほりて腹みつ
る故なり。
煮過して飪を失なへる物といまだ煮熟せざる物
くらふべからず。魚を煮るに煮ゑざるはあしゝ。煮過し
て飪を失なへるは味なくつかへやすし。よき程の節
あり。魚を蒸たるは久しくむしても飪を失なはず。
魚をにるに水多きは味なし。此事李笠翁が閑情寓
寄にいへり。
【感想】
食あたりになったら、絶食せよとある。又早く入浴しなさいともある。胃腸が病原菌や毒物に侵され、消化力が落ちるのであろう。下痢や嘔吐とは、体内に病原菌などが吸収される前に体外に排出させるもの。
前の食事が胃に残っているのに、時間だから食べるのは良くない。食には邪気が有り、それが滞ると言う趣旨なのだろう。それが滞っている間は、次の食で更に邪気を増やすのは良くない。粘っこい食品は、その邪気を吸着するのだろうか?もちろん大食漢は、1、2日食を絶っても大丈夫ではある。こう言う食事方法は、聞いたことが無い。
飪(にえばな:煮立った瞬間)を逃して、煮過ぎは美味しくないしつかえやすい。加熱が足りない料理もだめた。料理もタイミングが重要と言う事であろうか。蒸した魚は時間が経っても加熱過ぎと言う事は無い。魚を煮るに水が多いと不味いと明朝末清朝初期の作家、李漁は随筆閑情偶寄の中で記していると言う。
養生訓巻第三 飲食上