白髭 脇能物 作者不明
近江国白髭神社の縁起から。帝に霊夢があり、白髭明神に勅使た立ち、白髭宮に着くと、釣りする翁に出会い、白髭神社の縁起を語ると社殿に消える。勅使に末社の神が縁起を語り、白髭明神が現れ、舞楽を奏するうちに天女が天灯、竜神が竜灯を捧げて現れ舞をくりひろげる。
前ジテ:漁翁、後ジテ:白鬚明神、前ヅレ:漁夫、後ヅレ:天女、後ヅレ:龍神、ワキ:勅使、ワキヅレ:同行朝臣、アイ:末社神
二人 釣のいとなみいつまでか、隙も浪間に、明くれん
ツレ 棹さし馴るる海士小舟
二人 渡りかねたる、憂き世かな。
シテ 風歸帆を送る万里の程、江天渺々として水光平らかなり
二人 舟子は解く是明朝の雨、面白や比しも今は春の空、霞の衣ほころびて、嶺白妙に咲く花の、嵐も匂ふ日影かな。
二人 賤しき海士の心まで、春こそのどけかりけれ。
二人 花誘ふ、比良の山風吹にけり、比良の山風ふきにけり、漕ぎ行舟の跡見ゆる、鳰の浦半も遙々と、霞み渡りて天つ雁、歸る越路の山までも、眺めに續く氣色かな、眺めに續く氣色かな。
※花誘ふ、比良の山風吹にけり、漕ぎ行舟の跡見ゆる
巻第一 春歌上 128 宮内卿
五十首歌奉りし中に湖上花を
花さそふ比良の山風ふきにけり漕ぎ行く舟のあと見ゆるまで