玉鬘 四番目物 金春禅竹 作
源氏物語玉鬘から。旅の僧が初瀬川の岸辺で、里の女が川舟に棹さして寄る辺ない悲しい境涯を嘆いていて、僧に訳を聞かれると、初瀬寺に詣でるとのことで、僧を案内する。
僧が「二本の杉の立所を尋ねずは古川野辺に君を見ましや」の意味を聞くと、右近の作と女が答え、玉鬘の物語をする。玉鬘の話を初瀬の門前の男から玉鬘の物語を聞き、回向すると玉鬘の霊が現れ、死後もなお恋の妄執に永き闇路に迷う身を嘆き、懺悔するとともに永き夢より覚めたと喜ぶ。
前ジテ:里女 後ジテ:玉鬘内侍の霊 ワキ:旅の僧 アイ:初瀬の門前の男
シテ女 程もなき、船の泊りや初瀬川、上りかねたる氣色かな。
シテ 舟人も誰を戀ふとか大島の、浦悲しげに聲立てて、焦がれ來にけるいに
しへの、果しもいさや白浪の、よるべいづくぞ心の月の、み舟はそこと、
果しもなし。
シテ ただ我ひとり水馴棹、雫も袖の色にのみ。
シテ 暮て行、秋の涙か村時雨、秋の涙か村時雨、古川野邊の寂しくも、人や
見るらん身の程も、なを浮舟の楫を絶え、綱手悲しき類かな、綱手悲し
き類かな。
※舟の楫を絶え 巻第十一 恋歌一 1071
題しらず 曾禰好忠?
由良のとをわたる舟人かぢをたえ行方も知らぬ戀のみちかな