清き物かうばしき物もろく和かなる物味かろき物性
よき物此五の物をこのんで食ふべし。益ありて損
なし。是に飯する物食ふべからず。此事もろこしの
書にも見えたり。
衰病虚弱の人はつねに魚鳥の肉を味よくして少
つゞ食ふべし。参茋の補にまされり。性よき生魚
を烹炙よくすべし。塩つけて一両日過たる尤よし。
久しければ味よからず。且滞りやすし。生魚の肉豉
につけたるを炙煮て食ふもよし。夏月は久しく
たもたず。
脾虚の人は生魚をあぶりて食するに冝し。煮たる
よりつかえず。小魚は煮て食するに冝し。大なる生
魚はあぶりて食ひ或煎酒を熱くして生薑わさ
びなど加へ漬し食すれば害なし。
大魚は小魚より油多くつかえやすし。脾虚の人は
多食すべからず。薄く切て食へばつかえず。大なる
鯉鮒大に切或全身を煮たるは氣をふさぐ。うす
く切べし。蘿萄胡蘿萄南瓜菘根なども大に厚
く切て煮たるはつかへやすし。薄く切て煮るべし。
【感想】
清き物、香ばしき物、柔らかい物、味が軽い物、性良き物の5つが健康に良いので、好んで食べろと有るが、具体的な料理が無いので不明。これに反するものは、食べるなと有る。まあ、濃厚なフランス料理は、高くて食べられないので心配は無いが。
病気で衰弱している人は、常に魚や鳥の肉を味よくして、少しづつたべるべしとある。高価な参茋(さんぎ 薬用にんじん)を服用するより効果があるとある。医食同源であろう。昔は、入院した人のお見舞いに卵を持って行ったものです。新鮮な生魚を煮たり焼いたるすべしとある。塩漬けして1日2日経ったものが良く、それ以上長く漬け込むと味が落ちるし、胃腸の消化がしにくい。味噌漬けした物も焼いたり、煮たりすると良いが夏場はあまり日持ちしない。私は西京焼きの魚がすきです。
胃腸の弱い人は、生魚を焼いて食べると良いと有る。煮魚に比べ消化良いと有るが、経験に依るものであろうが、現代ではそう言う事は聞かない。生薑(ショウガ)、わさびを加えて熱い酒に浸して食べると害が無い。
大魚は、小魚より脂質が多いので、もたれやすいと有る。胃腸虚弱の人は、沢山食べず、薄切りにして食べると良いらしい。大きな鯉や鮒は、煮ても身体に良くないと有る。薄くして、食べると良い。大根、人参も根菜類は、薄く切って煮ると良いらしい。
養生訓巻㐧三 飲食上