色々の虫のこゑをあらそふ折節一しほ生田
の杜はさぞあるらんとおもひやらいたるところ
難及事也。きのふにとはんと思ひしにけふ
ははつ秋になればとひ侍らではと云こゝろ也。
沙弥満誓が哥に 清胤僧都
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君住まばとはまし物を津の国の生田のもりの秋の初風
はつ風といふ云事此名所の縁なり秋立と云題にて
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津の国のいくたのもりに宿からん秋風吹て後もとふやと
頓阿もよめり。又家隆卿
同
津の国の生田のもりのほとゝぎすをのれ住ずば秋や問まし
藤原秀能
吹風の色こそみへね高砂のおのへの松に秋はきにけり
松にふく風なれば花もみぢふくごとくにその
色は見へねども秋のくるとは聲にしられた
るとなり。
※この歌は、聞書に無く、新古今注(京都大学図書館蔵)を書写したもの。
校異(新古今注と)
見へねども→見えねど
くるとは→きたるとは
聲にしられたる→聲のしらべよりしられたる
となり→とよめり
高砂神社 相生の松