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尾張廼家苞 恋歌四 5

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尾張廼家苞 四之下 るによりて、かく宿はあれ果侍ぬとかこちうらむべき方 もなしと也。此説すべてきこえず。心ながくて詞に得がたくや。正明も心     を得ざりしを、からくして一説を得たり。たづねてもとはとひ 來る事、深き蓬とは、人のとひこで庭のあれたる事、露のかごとゝは其うらみをいふ 事、袖にかくべきかたぞなきとは、涙のみ袖にかゝりて、うらみのふしをえつゞけやらぬ事。 一首の意は、たま/\とひ來たれ共、深き道となるまでとはざりし くぜちをいはんとすれども涙のみ袖にかゝりてえいゆやらぬとなり。                    藤原保季朝臣 形見とてほのふみ分し跡もなしこしは昔の庭の萩原 二ノ句のほのは三句へかゝれしほのかなる跡もなしの意也。猶ほの                                     かにふみ 分しとつゞく なるべし。 むかしのは、昔になりしといはんが如し。一首の意は 人のかよひ來しは昔になりぬる庭の萩原なれば、ふみ分し昔の 形見とてほのかに残れる跡だにもなしと也。一首の意、形見にとてみる                            庭の跡がほのかにふみ分 た跡もない。かよひ來たは、むかしにて、 庭の道はこと/"\く萩原に成たと成。 萩原といふに古歌のより所 などあるか考へず。もしさることもなくは、蓬生とならんぞ まさるべき。萩原は、萩のしげりて        道を侵したる也。                    法橋行遍 名残をば庭の浅ちにとゞめ置て誰ゆゑ君がすみうかれけむ 人のかよはぬやうになりて、淺ぢも生じなれば、庭の淺ぢは、來ぬ人のかたみ也。すみうかるゝ とは、我方に人のゐづかぬ事。庭の淺ぢを名殘にのこして、我方に君がゐつかぬは、誰をおもふ故ぞと也。   摂政家百首歌合に 定家朝臣 忘れずはなれし袖もやこほるらむねぬ夜の床の霜のさ筵 床の霜の寒きさ筵に、ひとりねられぬにつけて、おもひやれ る意にて、我を忘れずは、馴し人の袖も、此わがそでのご とくこほりやすらんと也。大かたはかくの如し。袖のこほるといふは、正しく涙                をおもはせたるべけれども猶なきねのなみだ とみる べし。 我袖のこほる意下句にそなはれり。一首の意は、めもあ                          はぬ我なきねの 泪の霜のきゆるにつけて、おもへば、我おもふ人も我をわすれずは、 我とかさねなれた袖のなみだがこほりとすらんとなり。                      家隆朝臣 風ふかば嶺にわかれむ雲をだにありし名残のかたみともみよ 上ノ句風ふかば嶺にわかるゝ白雲のたえてつれなき                       君がこゝろか。  とある古歌の 詞によれり。ありし名殘は、別し暁の横雲の名殘也。ありし名殘                                 のは、ありし別 の也。此詞此集の比より 此意につかふ事也。  但上にいへるわかれむ雲は、横雲の事には あらず。横雲の事にはあらねど、      その意ばへをよめる也。 いつにても風ふけば嶺に別れむ雲を 見ば、それをだに也。だにといへるは、今はあふべきよしもなければ せめてハそれを見だにせよの意也。一首の意は、風が吹て雲が嶺に別るゝ                       ならば、せめてそれなりともあひし夜の 別に横雲が嶺にわかれたが、其形見給へと見るべしと也。上句の雲は いつにてもああれ風にて嶺に別るゝ雲也。其雲にて横雲をおもふ也。 名殘のかた みとは、名殘とおもひて形見ともみよといふ意也。されど何 とかや同じことの重なりたる如くきこゆ。なごりは別也。此ころ                         よりみゆる詞也。   百首歌奉し時     摂政 いはざりき今こんまでのそらの雲月日へだてゝ物おもへとは いはざりきは人のいはざりし也。然れどもわがいはざりしやう に聞えていかゞ。何の子細が            あらん。  二三ノ句、むづかしきやうなれどよく きこえて、いとたくみなるいひ、さま也。そはまづ月日へだてゝと いへるは、月日をへて久しくあはぬことなるを、それに空なる 月日をへだてさふることをかねて、空の雲のとはいへる也。雲は月 をも日をも隔つる物なれば也。さてそれを今こむまでの といへるは、今ちかき程にこんどこその玉ひつれ。それ迄の あひだの空の雲に月日をへだてゝ、待久しく物おもへとは の玉はざりし物をといひかけてうらむる意也。二三ノ句は、今又來                             んまでは雲を見て なぐさみ玉へと契し也。雲をしかいふは、楚王の故事によりて也。一首の意は、 かく別をしても、今又來逢べし。それまでは雲をみてなぐさめとの玉ひし。其 雲で月日をへだてゝ物おもひを せよとはのたまhざりし物をと也。さて又雲に物おもふといふよせ有。 夕ぐれは雲のはたてに物ぞおもふなど有ごとく。あながちなる                               縁の詞なり。 月日へて夕ぐれごとにまちて物思ふ意也。 ※風ふかば~ 古今集 恋二  題しらず                 壬生忠峯 風ふけは峰にわかるる白雲のたえてつれなき君か心か 穂久邇文庫本 風ふけ(イか)ば ※夕ぐれは~ 古今集恋歌一  題しらず                 よみ人知らず 夕ぐれは雲のはたてに物ぞ思ふあまつそらなる人をこふとて

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