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Channel: 新古今和歌集の部屋
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尾張廼家苞 恋歌四 11

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尾張廼家苞 四之下              定家朝臣 消わびぬうつろふ人の秋のいろに身をこがらしの杜の下露 本哥六帖に、人しれぬおもひするがの國にこそみをこがら しの杜はありけれ。初句は露の縁語にて、思ひきえてわび しき意なり。初句消るは死る事。一首の意は、人の心があきにう        つろふ故、身をこがしてしにもやらで物おもふとなり。 摂政家歌合に  寂蓮 こぬ人を秋のけしきやふけぬらんうらみによわる松虫の声 初句のをもじ六百番歌合にのとあり。のなればこと もなし。此集に改めて入られたるにや。をにては四の句へ かゝれり。をにてもきこゆれど猶のとある哥合によるべし。一首の意       こぬ人が我を厭たけしきが段々ふかくなるとみゆる ゆゑうらみてまちよわると也。 まつ虫に待意をもたせたり。此哥はやといひらむといへるたゞ 松虫のうへをよめるになりておのが恋の意をよそへたる にはなり難し。いかゞ。松虫の声もと、もゝじを加ふれば、戀 の歌になれども、もゝじを置べき所なければせんかたなし。 やといひ、らんといへるは、をとこの上の子となれば、をとこのわれをあきたる意のす ゝみやしつらんといふ事なれば、いかでか虫の意になり難からん。下句はまちよわり たる義にて、松虫は我身のたとへ声といふもじになく意はあるべし。一首の意 は、來ぬ人が、いよ/\われをあいたのかしらぬとおもふ故うらみて此ころは待よわ りて泣てばかりをると也。もゝじを またずして、恋の歌なる物をよ。 戀の歌とて  慈圓大僧正 我こひは庭の村萩うら枯て人をも身をも秋の夕ぐれ 此哥はいかに思ひめぐらしても心得がたし。其故は、下句秋 といふをあく心にとらざれば、二のをもといふ詞 落着なし。然るに身をあくとおいふはさる事なれ ども、人をもあくといふ事あるべくもあらざれば也。 是は一わたりさる事のやうにう聞こゆれど、考るにさには あらじ。そは秋といふもじを、人をも身をもあくと秀句に みられたるゆゑの事なり。こゝは、秋は物わびしき時 なれば、わびしき事に用ひたる秋の字にて、俗にこまつたと いふ事 なり。  一首の意は、秌の夕ぐれに、うら枯たる庭 の萩をながめて、おもへらく我戀は、あのむら萩の ごとく、かれぬる中なれば、人をも身をもうらみ しほれたりとなり。一首の意は我戀する中は庭前の            むら萩のごとく、かれ/\になりて、 其人のこゝろのかれたるをも。また我身のうき事をも、 わびしlくこまり入たる秋の夕ぐれかなと、いちなげき たる心 ばへなり。三の句、契のかれたる意と、うらむる意とを かねたるべし。三の句にうらむる意はなし。たゞ我おもふ人の          こゝろのかはりたる事を、秋の夕暮といへる。 下の句の餘音にこもりてきこゆる。哥道の妙なり。 万葉第十一、我せこにわが恋をれば我君の、草さへ おもひうら枯にけり。是はたゞ草のうら枯たりといふ              詞の出所にて、此哥を本哥にもと づきてよみたるにもあらねば、 させる用なし。         ※六帖に、人しれぬおもひ~ 古今和歌六帖 第二 森 人知れぬ思ひするがの國にこそ身をこがらしの森はありけれ   ※初句のをもじ六百番歌合にのとあり 六百番歌合 恋下 寄虫恋 こぬ人の秋のけしきやふけぬらむうらみによわる松むしのこゑ   ※万葉十一、我せこに恋をれば~ 万葉集巻第十一 寄物陳思 読人不知 我背兒尓吾戀居者吾屋戸之草佐倍思浦乾来 我が背子に我が恋ひ居れば我が宿の草さへ思ひうらぶれにけり 拾遺集 恋歌三  女の許につかはしける             人麿 わがせこをわがこひをれはわがやどの草さへ思ひうらがれにけり

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