(32)誰がために書く - 大河ドラマ「光る君へ」
道長(柄本佑)の思惑通り、一条天皇(塩野瑛久)はまひろ(吉高由里子)が書いた物語に興味を示す。そこで道長は、まひろに道長の娘・彰子(見上愛)が暮らす藤壺へあがり...
源氏物語 桐壺 源氏の君は、主上の常に召しまつはせば、心安く里住みもえし給はず。心の内には、ただ藤壺の御有樣を、類ひ無しと思ひ聞こえて、左樣ならむ人をこそ見め。似る人無くも御座しけるかな。大殿の君、いとをかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど、心にも付かず覚え給ひて、幼き程の心一つに懸かりて、いと苦しきまでぞ御座しける。 道 長 帝に献上したあれは、御心に叶わなかった。 まひろ 力及ばず、申し訳ございませぬ。 道 長 落胆はせぬのか。 まひろ はい。帝に御読み頂く為に書き始めた物にございますが、もはやそれはどうでもよくなりましたので、落胆致しませぬ。今は、書きたい物を書こうと思っております。その心を掻き立てて下さった道長様には、深く感謝致しております。 道 長 それが、お前がお前である道か? まひろ 左樣でございます。 (まひろ ナレーション) 源氏の君は、お上が常に御側にお召しなさるので、心安く、里住まいも出来ません。心の中では、ただ藤壺の御姿を類なき者無しとお思い申し上げ、この樣な人こそ妻にしたい、こう言う人に似ている人など、他に・・・。 (道長 ナレーション) 俺が惚れた女は、こう言う女だったのか?