(33)式部誕生 - 大河ドラマ「光る君へ」
道長(柄本佑)に頼まれ、まひろ(吉高由里子)は彰子(見上愛)が暮らす藤壺に住み込みで働き始める。まひろは早速、物語の続きを書こうとするも、宮中での暮らしに慣れず...
こゝろぎたなしと見たまひつべし。にごり
にしめるほどよりもなまうかびにては、
かへりてあしきみちにもたゞよひぬべくぞ
おぼゆる。たえぬ宿世あさからで尼にも
なさでたづねとりたらむもやがてあひ
そひてとあらむをりもかゝらむきざみ
をもみすぐしたらむ仲こそちぎりふか
くあはれならめわれも人もうしろ
めたくこゝろおかれじやは。またなのめに
うつろふかたあらむ人をうらみてけしき
ばみそむかたをこがましかりなむ。
こゝろはうつろふかたありとも見そめし
こゝろざしいとほしく思はゞさるかたの
よすがに思ひてもありぬべきにさやう
ならむたぢろきにたえぬべきわざなり。
源氏物語 帚木 雨の品定 心ざし深からむ男をおきて、見る目の前に辛き事有りとも、人の心を見知らぬやうに逃げ隠れて、人をまどはし、心を見むとするほどに、長き世の物思ひになる、いと味気なき事なり。心深しやなど、褒めたてられて、哀れ進みぬれば、やがて尼に成りぬかし。思ひ立つほどは、いと心澄めるやうにて、世に返り見すべくも思へらず。いで、あな悲し。かくはた思しなりにけるよなどやうに、あひ知れる人來とぶらひ、ひたすらに憂しとも思ひ離れぬ男、聞きつけて涙落とせば、使ふ人、古御達など、君の御心は、哀れなりける物を。あたら御身をなど言ふ。自ら額髪を掻き探りて、あへなく心細ければ、うちひそみぬかし。忍ぶれど涙零れそめぬれば、折々事にえ念じえず、悔しきこと多かめるに、仏もなか/\心ぎたなしと、見給ひつべし。濁りにしめる程よりも、なま浮かびにては、かへりて悪しき道にも漂ひぬべくぞ覚ゆる。絶えぬ宿世浅からで、尼にもなさで 尋ね取りたらむも、やがて相添ひて、とあらむ折もかゝらむきざみをも、見過ぐしたらむ仲こそ、契り深くあはれならめ、我も人も、うしろめたく心置かれじやは。又、なのめに移ろふ方あらむ人を恨みて、気色ばみ背かむ、はたをこがましかりなむ。心は移ろふ方有りとも、見初めし心ざし愛ほしく思はば、さる方のよすがに 思ひても有りぬべきに、左樣ならむたぢろきに、絶えぬべきわざなり。 アンダーラインは、画面に出た書部分(上記)。太字は、まひろが読み上げた部分(下記)。 まひろ 心は他の女の方にあったとしても、見初めた頃のままに、愛おしく思われているのであれば、それをよすがに、思っていれば良い物を、そうはならずに、たじろぐから、縁は絶えてしまう物なのです。 惟 規 面白いよ、それ。大勢の男と睦んだ訳でも無い癖に、よく書けるねえ、そんなの。 まひろ 睦まなくても書けるのよ。 い と あのう、その樣な下品な殿御達の話、帝がお喜びになりますでしょうか?