新古今和歌集 巻第二十釋歌
維摩経十喩中に此身如夢といへるこころを
赤染衞門
夢やゆめうつつや夢とわかぬかないかなる世にか覺んとすらむ
二月十五日の暮かたに伊勢大輔がもとにつ
かはしける 相模
常よりもけふの煙のたよりにや西をはるかに思やるらん
返し 伊勢大輔
けふはいとゞ泪に暮ぬ西の山おもひ入日のかけをながめて
(肥後歌 闕)
西行法師をよび侍けるにまかるべき由を
ば申ながらまうでこで月のあかりけるにかどの
まへをとほるときゝてよみてつはしける
待賢門院堀河
西へ行くしるべとおもふ月影の空だのめこそかひなかりけれ
読み:ゆめやゆめうつつやゆめとわかぬかないかなるよにかめざめむとすらむ
作者:あかぞめえもん平安中期女流歌人赤染時用の娘実父は母の前夫平兼盛とも。大江匡衡の妻藤原道長の娘倫子とその子上東門に仕えた。
備考:新古今注
読み:つねよりもきょうのけむりのたよりにやにしをはるかにおもいやるらむ
意味;斉信様がお亡くなりになったので、いつもより今日の涅槃会の栴檀のお香の煙を縁として、西方浄土に旅立たれたのを思いやっているのでしょう。
作者:さがみ平安中期の女流歌人。三十六歌仙の一人。養父は源頼光。相模守大江公資の妻となり、夫と別れた後脩子内親王に仕えた。
備考:新古今注、九代抄、九代集抄
読み:きょうはいとどなみだにくれぬにしのやまおもいいりひのかげをながめて
意味:今日の涅槃会は、大変涙にくれて、あの方が向かわれた西方浄土の方角に思い入り、入り日の光を眺めて偲んでおりました。
作者:いせのおおすけ平安中期の女流歌人。いせのたゆうともよむ。伊勢の祭主の大中臣輔親の娘。高階成順と結婚。。一条天皇中宮藤原彰子に仕えた。
備考:涙にくれると日が暮れる、思い入ると日の入りの掛詞
新古今注
平成27年8月7日 壱