新古今和歌集 巻第十八雑歌下
夕暮に蜘蛛のいとはかなげにすがくを常よりもあはれと見て
僧正遍昭
ささかにの空にすかくも同しことまたき宿にも幾夜かは經む
題しらす 西宮前左大臣
光待つ枝にかかれる露の命消えはてねとや春のつれなき
野分したる朝に稚き人をだに問はさり
ける人に 赤染衞門
荒く吹く風はいかにと宮城野のこ萩か上を人の問へかし
和泉式部道貞に忘られて後程なく
敦道親王かよふと聞きて遣はしける
うつろはてしはし信太の森を見よかへりもぞする葛のうら風
返し 和泉式部
秋風はすこく吹けとも葛の葉のうらみかほには見えしとそ思ふ
読み:ささがにのそらにすがくもおなじことまだきやどにもいくよかはへむ 隠
意味:蜘蛛が空に頼りない巣を張るのと同じ事だ。立派に建てた家だって幾世代住めるわけではないのだから。
作者:へんじょう819~890俗名良岑宗貞。恒武天皇の孫。六歌仙、三十六歌仙の一人。左近衛少将まで進んだが、仁明天皇崩御により出家。花山僧正。
読み:ひかりまつえだにかかれるつゆのいのちきえはてねとやはるのつれなき 隠
作者:みなもとのたかあきら914~982醍醐天皇の子。西宮殿とも。安和の変に連座し大宰権帥に左遷。
読み:あらくふくかぜはいかにとみやぎののこはぎがうえをひとのとえかし
作者;あかぞめえもん平安中期女流歌人赤染時用の娘実父は母の前夫平兼盛とも。大江匡衡の妻藤原道長の娘倫子とその子上東門に仕えた。
読み:うつろわでしばししのだのもりをみよかえりもぞするくずのうらかぜ 隠
意味;心を移さないで、もう少し信じて待っていてはどうですか。和泉の信太の森の葛の葉は3枚のうち2枚は裏返っている様に前和泉守道貞様も風が吹いてふらっと貴女の元に帰ってくるかもしれませんよ。
読み:あきかぜはすごくふけどもくずのはのうらみがおにはみえじとぞもう 隠
意味:秋風がどんなに強く吹こうとも、私の葉は返って裏を見せることはなく、もう愛情も失せてしまいましたので、恨み顔をその人に見せないと思います。
作者:いずみしきぶ平安中期の女流歌人。大江雅致の娘。橘道貞と結婚し、小式部内侍を生む。為尊親王と弟の敦道親王の寵愛を受ける。一条天皇中宮彰子に仕え、藤原保昌と再婚。
大阪府和泉市 信太森神社
平成27年8月23日 壱