Quantcast
Channel: 新古今和歌集の部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

謡曲 賀茂

$
0
0

賀     茂

                 脇能物、荒神物 金春禅竹 作

播磨国室明神と賀茂明神とは一体ということで室神社の神職が賀茂神社へ参詣すると糺の森の御手洗川で二人の女が水を汲んでおり、神職が川辺の祭壇の白羽の矢の謂れを二人に聞くと、昔秦氏女(はだのうじにょ)が川上から流れてきた白羽の矢を拾ったところ懐妊し男子を出産、その子が別雷神で、母と矢とともに賀茂三所の神となった旨を伝え、自分たちはその神であると告げ木綿四手に紛れて消える。末社の神が賀茂明神の来歴を述べ、舞を舞うと御祖神が現れ神徳と御代を讃え、舞の袖を翻して川に浸して涼むと別雷神が現れ、雨を降らせ、轟かして五穀豊穣を祝し、御祖神は糺の森へ、別雷神は飛び去る。

前ジテ:里の女 後ジテ:別雷神 前ヅレ:里の女 後ヅレ:御祖神
ワキ:室明神神職 ワキヅレ:従者 アイ:賀茂末社神

ワキ いかなる是なる水汲む女性に尋申すべき事候
シテ女 これは此あたりにては見馴れ申さぬ御事なり、いづくよりの御參詣にて候ぞ
ワキ 實よく御覽じ候物かな、これは播州室の明神の神職の者にて候が、初めて當社に參りて候、先々是なる河邊を見れば、新く壇を築き、白木綿に白羽の矢を立て、剰へ渇仰の氣色見えたり、是はそも何と申たる事にて候ぞ
シテ 扨は室の明神よりの御參詣にて候ぞや、またこれなる御矢は當社の御神体とも御神物とも、ただ此御矢の御事なり、あからさまなる御事なり共、渇仰申させ給ひ候へ
ワキ げに有難き御事かな、扨々當社の神秘にをひて、樣々有べき其中に、分て此矢の御謂、委く語り給ふべし
シテ 惣じて神の御事を、あざ/\しくは申さね共、あら/\一義を顕すべし。
シテ 昔此賀茂の里に、秦の氏女といひし人、朝な夕なこの河邊に出て水を汲み神に手向けるに、有時河上より白羽の矢一流れ來り、此水桶に止まりしを、取て歸り庵の軒にさす、主思はず懐胎し男子を産めり、此子三歳と申し時、人々圓居して、父はと問へば此矢を指して向かひしに、此矢すなはち鳴る雷となり、天にあがり神となる、別雷の神是なり。
ツレ女 其母御子も神となりて、鴨三所の神所とかや
シテ さやうに申せば憚りの、誠の神秘は愚かなる
二人 身に辨へはいかにとも、いさ白真弓やたけの人の、治めむ御代を告げ白羽の、八百萬代の末までも、弓筆に殘す心なり。
ワキ 能々聞けば有難や。扨々其矢は上る代の、今末の世に當たらぬ矢までも、御神体なる謂はいかに
シテ 實よく不審し給へ共、隔てはあらじ何事も
ワキ 心からにてむも濁るも
シテ 同じ流れの樣々に
ワキ 賀茂の川瀬も變はる名の
シテ 下は白河
ワキ 上は賀茂川
シテ 又そのうちにも
ワキ 變はる名の。
同 石川や、瀬見の小川のければ、瀬見の小川のければ、月も流れを尋てぞ、すむも濁るも同じ江の、淺からぬ心もて、何疑ひのあるべき、年の矢の、迅くも過る光陰、惜しみても、歸らぬは元の水、流れはよも盡きじ、絶せぬぞ手向なりける。

石川や、瀬見の小川のければ、月も流れを尋てぞ、すむ

第十九 神祇歌 1894 鴨長明
鴨社歌合とて人々よみ侍りけるに月を

石川やせみの小川のければ月もながれを尋ねてぞすむ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>