Quantcast
Channel: 新古今和歌集の部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

式子内親王集 正治百首 秋

$
0
0


237 転た寝の朝気の袖に変はるなり鳴らす扇の秋の初風 新古今
うたたねのあさけのそてにかはるなりならすあふきのあきのはつかせ
朝気の風に→益田本、岩崎本
本歌:おおかたの秋来るからに身に近くならす扇の風ぞ涼しき(後拾遺 秋上 藤原為頼)

238 眺むれば木の間移ろふ夕月夜やや気色立つ秋の空かな 風雅集
なかむれはこのまうつろふゆふつくよややけしきたつあきのそらかな
木の葉移ろふ→益田本他 有月に→文化九本、森本、やく気色立つ→三手本 秋の初風→森本

239 蜩の声も尽きぬる山陰に又驚かす入相の鐘
ひくらしのこゑもつきぬるやまかけにまたおとろかすいりあひのかね
声に尽きぬる→春海本
本歌:蜩の鳴きつるなへに日は暮れぬと思ふは山の陰にぞありける (古今集 秋上 よみ人知らず)

240 跡もなき庭の浅茅にむすぼほれ露のそこなる松虫の声 新古今
あともなきにはのあさちにむすほほれつゆのそこなるまつむしのこゑ

241 我が門の稲葉の風に驚けば霧の彼方に初雁の声 玉葉集
わかかとのいなはのかせにおとろけはきりのあなたにはつかりのこゑ
我が宿の→益田本他

242 寄せ返る波の花摺り乱れつつしどろに移す真野の浦萩
よせかへるなみのはなすりみたれつつしとろにうつすまののうらはき
しどろにうつる→春海本

243 白露の彩る木々は遅けれど萩の下葉ぞ秋を知りける 続後撰
しらつゆのいろとるききはおそけれとはきのしたはそあきをしりける
おうけれど→神宮本 おちけれど→春海本 萩の下葉に→三手本 荻の下葉に→岩崎本 色を染めける→C本
本歌:いと早も鳴きぬる雁か白露の彩る木々も紅葉あへなくに(古今集 秋上 よみ人知らず)

244 秋と言へば物をぞ思ふ山の端にいざよふ雲の夕暮の空 新勅撰
あきといへはものをぞおもふやまのはにいさよふくものゆふくれのそら
物をも思ふ→益田本、文化九本、春海本

245 花薄未だ露深し穂に出でて眺めじと思ふ秋の盛を 新古今
はなすすきまたつゆふかしほにいててなかめしとおもふあきのさかりを
穂に出でて→森本、B本、三手本、岩崎本、C本、京大本、森本、A本、松平本、文化九本、正治初度 出では→益田
本歌:今よりは植てだに見じ花薄穂に出づる秋は侘びしかり(古今集 秋上 平貞文)
   忍ぶれば苦しかりけり篠薄秋の盛になりやしなまし(拾遺集 恋二 勝観) 

246 狩衣乱れにけらし梓弓引馬の野辺の萩の下露 続古今
かりころもみたれにけらしあつさゆみひくまののへのはきのしたつゆ
唐衣→国会本、河野本、乱れにけりな→続古今 萩の朝露→続古今


247 萩の上に雁の涙の置く露は凍りにけりな月に結びて 風雅集
はきのうへにかりのなみたのおくつゆはこほりにけりなつきにむすひて
涙を→A本、国会本、河野本 敷く露は→河野本 月に向かひて→B本 結りて→C本 露に結びて→国会本
本歌:鳴き渡る雁の涙や落ちつらむ物思ふ宿の萩の上露(古今集 秋上 よみ人知らず)

248 眺め侘びぬ秋より他の宿もがな野にも山にも月はすむらむ 新古今
なかめわひぬあきよりほかのやともかなのにもやまにもつきやすむらむ
消え侘びぬ→C本
本歌:何処にか世をば厭はむ心こそ野にも山にも惑ふべらなれ(古今集 雑下 素性)

249 更けにけり山の端近く月冴えて十市の里に衣打つ声 新古今
ふけにけりやまのはちかくつきさへてとをちのさとにころもうつこゑ
月澄みて→C本、京大本、神宮本 月絶えて→河野本 十万の里に→三手本 衣打つなり→B本

250 故郷は葎の軒も末枯れて夜な夜な晴るる月の影かな 続後拾遺
ふるさとはむくらののきもうらかれてよなよなはるるつきのかけかな
霜枯れてよるよる→続後拾遺

251 解けて寝ぬ袖さへ色に出ねとや露吹き結ぶ峰の木枯 風雅集
とけてねぬそてさへいろにいてねとやつゆふきむすふみねのこからし
出でぬとや→B本、京大本 露吹き払ふ→B本、吹き残す→岩崎本、三手本

252 著きかな浅茅色付く庭の面に人目枯るべき冬の近さは 風雅集
しるきかなあさちいろつくにはのおもにひとめかるへきふゆのちかさは
しきるかな→森本 冬の近きは→文化九本
本歌:山里は冬ぞ寂しさ勝りける人目も草も枯れぬと思へば(古今集 冬 源宗于)

253 秋の色は籬にうとくなりゆけど手枕馴るる閨の月影 新古今
あきのいろはまかきにうとくなりゆけとたまくらなるるねやのつきかけ
枕に慣るる→B本 手枕なにに→C本 閨の月かな→三手本

254 浅茅原初霜結ぶ長月の有明の空に思ひ消えつつ
あさちはらはつしもむすふなかつきのありあけのそらにおもひきえつつ

255 桐の葉も踏み分け難くなりにけり必ず人を待つとなけれど 新古今
きりのはもふみわけかたくなりにけりかならすひとをまつとなけれと
桐の葉の→森本 待つとなければ→松平本
本歌:我が宿は道も無きまで荒れにけりつれなき人を待つとせし間に(古今集 恋五 遍昭)

256 思へども今宵ばかりの秋の空更け行く雲に打ち時雨れつつ 続拾遺
おもへともこよひはかりのあきのそらふけゆくくもにうちしくれつつ
秋のにら→神宮本

参考
式子内親王集全釈 私家集全釈叢書 奥野 陽子 著 風間書房

Viewing all articles
Browse latest Browse all 4333

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>