井蛙抄
或人云、千載集の比西行在東國けるが勅撰有 と聞て上洛しける道にて登蓮にあひにけり。勅撰の事尋けるに、「はや披露して御うたも多く入たる。」と云けり。「鴫たつ澤の秋の夕暮と云歌入たりや。」ととひけれは、「見えざりし。」とこたへけれは、。「扨は見て要なし。」とて、それより又東國へ下 りけると云々。
或聖西國よりのほりけるが、住吉に參て通夜して侍りける夢に、御社の前に僧俗男女貴賎參てあつまりたり。ゆゆ
しき人も多し。猶人を待るゝ體なり。しはらく有て黒衣僧一人參たるを御殿のうちへ召入られて後、けだかき御聲にて、
心なき身にも哀は知られけり鴫立澤の秋の夕暮
と云哥を講 せられけると見侍るよし語けるとなん。
或人云、千載集の比西行在東國けるが勅撰有 と聞て上洛しける道にて登蓮にあひにけり。勅撰の事尋けるに、「はや披露して御うたも多く入たる。」と云けり。「鴫たつ澤の秋の夕暮と云歌入たりや。」ととひけれは、「見えざりし。」とこたへけれは、。「扨は見て要なし。」とて、それより又東國へ下 りけると云々。
或聖西國よりのほりけるが、住吉に參て通夜して侍りける夢に、御社の前に僧俗男女貴賎參てあつまりたり。ゆゆ
しき人も多し。猶人を待るゝ體なり。しはらく有て黒衣僧一人參たるを御殿のうちへ召入られて後、けだかき御聲にて、
心なき身にも哀は知られけり鴫立澤の秋の夕暮
と云哥を講 せられけると見侍るよし語けるとなん。