ある時は仕官懸命の地をうら
やみ一たびは佛蘺租室の扉に入
らむとせしもたよりなき風雲に
身をせめ花鳥に心を労して
暫く生涯のはかりごととさへなれば
終に無能無才にして此一筋につな
がる。樂天は五臓の神をやぶり老杜は
痩せたり、賢愚文質のひとしから
ざるもいづれか幻の栖ならずやと
おひ捨てふしぬ。
先たのむ椎の木もあり夏木立
↧
幻住庵の記 その8
↧
ある時は仕官懸命の地をうら
やみ一たびは佛蘺租室の扉に入
らむとせしもたよりなき風雲に
身をせめ花鳥に心を労して
暫く生涯のはかりごととさへなれば
終に無能無才にして此一筋につな
がる。樂天は五臓の神をやぶり老杜は
痩せたり、賢愚文質のひとしから
ざるもいづれか幻の栖ならずやと
おひ捨てふしぬ。
先たのむ椎の木もあり夏木立