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Channel: 新古今和歌集の部屋
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恋歌四 袖に宿る月 筆者不明屏風コレクション八

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新古今和歌集 第十四 戀歌四

千五百番歌合に    攝政太政大臣

 

わがなみだ

もとめて

そでに

やどれ月

    さりとて

    人の

      かげは

    みえねど

 

読み:わがなみだもとめてそでにやどれつきさりとてひとのかげはみえねど

意味:恋人に捨てられて寂しい私の涙を探して袖に宿ってくれ。月よ。だからといって、あの人の姿は映っていないですが。

作者:藤原良経ふじわらのよしつね1169~1206関白九条兼実の子。後京極殿と呼ばれた。新古今和歌集に関与

備考:千五百番歌合 美濃、新古今注、新古今和歌集抄出聞書(陽明文庫) 


筆者不明屏風コレクション九

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分析中

平成27年5月16日十點貮/十六

筆者不明屏風コレクション十

筆者不明屏風コレクション十一

恋歌四 夕暮れを問わば訪えかし 筆者不明屏風コレクション十三

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巻第十四戀歌四

 百首歌中に 式子内親王

いきて

よにあす

まで

人は

 つらからじ

       この

         夕暮を

        とはば

          とへかし

 

読み:いきてよもあすまでひとはつらからじこのゆうぐれをとわばとえかし 隠

意味:まさか明日まで貴方のことで嘆き悲しみながら生きてることができません。だからこの夕暮にこの歌を聞いたなら訪ねて来て欲しい。

備考:百首歌不詳。穗九邇本では生きて世も

筆者不明屏風コレクション十二

筆者不明屏風コレクション十四

筆者不明屏風コレクション十五


冬歌 片敷く袖の色 筆者不明屏風コレクション十六

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新古今和歌集巻第六冬歌   前大僧正慈円

木の葉ちる
やどにかたし
くそでの
いろをあり
ともしらで
ゆくあらしかな



木の葉散る宿に片敷く袖の色をありとも知らで行く嵐かな

筆者不明屏風コレクション 全体

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屏風左

                

新古今和歌集巻第二春歌下         ①拾遺和歌集巻第一春

後鳥羽院                       源重之

                

新古今和歌集巻第十六雜歌上       ③分析中

後京極良経

                

古今和歌集巻第十七雑歌上         ⑤新千載和歌集巻第十一恋歌一

よみ人知らず                    よみ人しらず

                

新古今和歌集第十四戀歌四         ⑦分析中

後京極良経

 

屏風右

                

新古今和歌集第十三戀歌三        ⑨新続古今和歌集巻第十二恋歌二

式子内親王                     兼好法師

                

新古今和歌集巻第六 冬歌          ⑪新古今和歌集巻第四秋歌上           

源信明                         慈円                     

                            

古今和歌集巻第十四恋歌四         ⑬新古今和歌集巻第十四恋歌四

素性                          式子内親王

                

⑯新古今和歌集巻第六冬歌          ⑮分析中

慈円

 

裏面

 

176=16×11

平成27年5月16日十點貮

日野明和九年方丈庵跡碑文

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長明方丈石


物之傳於世也固難矣銘識懿器以遺諸後昆者盖以牽戀身後

之名云而猶且有時泯泯焉逸人高僧之辨髦毀譽偶然會心適

賞即其物微叔世稱之不己者有焉天寳爲之抑亦有以人傳者

也 蓮胤上人芬棄青紫腴味淨寂遺形骸於雲水之表娯神情

於風雅之林方丈室宇游方有脚一車琴書随處葆眞曾住此境

亦鵬摶之一息非有情於牽戀者矣然其高風麗藻爲騒人墨客

所欽慕即一時栖徨之處自然成蹊徑千載令名同磐石不朽者

天耶人耶何共偉也此當與烏萇之曬衣饒州之磨鏡并稱云

明和壬辰夏五             平安  巌垣彦明撰
                           岡部長啓書

 

物の伝於世也固難矣。

銘識懿器以って遺諸後昆者盖以牽恋身後の名云而猶且有時泯泯。

焉逸人高僧の弁髦毀誉偶然会心適賞即その物微叔世称の不己者有焉んや天宝為の抑亦た有以人伝者也。

蓮胤上人芬棄青紫腴味浄寂遺形骸於雲水之表娯神情於風雅の林、方丈室宇游方有脚一車琴書随処葆新曽住此境亦た鵬摶之一息非有情於牽恋者矣然其高風麗藻為、騒人墨客所欽慕。

即ち一時栖徨の処、自然成蹊径千載令名同磐石不朽者天耶人耶何共偉也。此当与烏萇の曬衣饒州の磨鏡并びに称云


夏歌 卯花月の如く

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新古今和歌集 巻第三夏歌

卯花如月といへるこころをよませ給ひける   白河院御歌

 

卯の花の

 

むらむら咲ける垣根をば

 

    雲間の

 

      月の

 

       かげかとぞ

 

          見る


読み:うのはなのむらむらさけるかきねをばくもまのつきのかげかとぞみる 隠

 

意訳:卯の花が、あちらこちらに咲く垣根を見ると、雲の間の月の影がさしたものかと思ってしまいました。

 

作者:しらかわてんのう1052~1129後三条天皇の皇子。上皇として院政を始める

 

備考:未詳

 

奈良県立万葉文化館 (明日香村飛鳥)庭園

春第二 飛香舎万世の藤

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新古今和歌集 巻第二春歌下

飛香舎にて藤花宴侍りけるに      延喜御歌


かくてこそ見まく


    ほしけれ


よろづ


 代を


    かけてにほへる


        藤波の花



読み:かくてこそみまくほしけれよろずよをかけてにおえるふじなみのはな隠


意訳:こうやってずーと見ていたいものだ。万代に渡って咲き続けるようなみごとな藤の花を。


作者:醍醐天皇だいご885~930宇多天皇の皇子。菅原道真を登用するなど延喜の治と呼ばれる親政を行った。古今集が編纂された。


備考:飛香舎は、後宮の一つで、庭に藤が咲いていることから別名藤壷未詳


春日部 牛島 藤

夏歌 賀茂片岡社のほととぎす

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新古今和歌集 巻第三夏歌

 加茂に詣でて侍りけるに人のほととぎす鳴かなむと申しけるあけぼの


 片岡の梢をかしく見え侍りければ
                      紫式部

     郭公こゑ


  待つほどはかた


岡の


 森のしづくに立ち


   や濡


     れまし



読み:ほととぎすこえまつほどはかたおかのもりのしずくにたちやぬれまし隠


意訳:時鳥の泣き声を待つ間に片岡の森の辺りで立って雫に濡れていましょう。


作者:むらさきしきぶ973?~1014?藤原為時の娘。藤原宣孝と結婚し、大弐三位を生むが、夫と死別。一条天皇中宮彰子に仕え源氏物語を執筆。。


備考:歌枕名寄


上賀茂神社 片岡社 石碑


新古今和歌集に撰歌された伊勢物語

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一 段 初冠したばかりの時、春日の姉妹に信夫文字摺の衣を添えて。ませたガキでしたね。

994 第十一 戀歌一 女に遣はしける 在原業平朝臣

春日野の若紫のすりごろもしのぶのみだれかぎり知られず

 

六 段 女の子を誘拐して鬼に食われたと勘違いして。

851 第八 哀傷歌 題しらず 在原業平朝臣

白玉か何ぞと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを

八 段 業平が東下りの際、中仙道を通った時、長野の浅間山が噴火しているの見てでも富士山も別名浅間山というし、貞観6年(864年)に噴火しているとのこと。よみ人知らずの歌らしい。

903 第十 羇旅歌 東の方に罷りけるに淺間の嶽に立つ煙の立つを見てよめる 在原業平朝臣

信濃なる淺間の嶽に立つけぶりをちこち人の見やはとがめぬ

 

九 段 業平が東下りの際、東海道の三河の八橋(8段では、中仙道でしたが・・・)で、「かきつばた」の折り句で即興歌を。知り合いの修験僧にばったり会って、昔の恋人に手紙を託し。駿河では、富士山の雪がまだらに残っているのを。また、武蔵の国で隅田川を渡る時、船頭が、一行がぐずぐずしているので、怒って適当に「都鳥」と答えたばかりに、言問橋や言問通の名のいわれに。カキツバタ(夏花)からユリカモメ(冬鳥)まで、半年もかけて三河から武蔵まで。ずいぶんゆっくりの旅ですね。知人によると今は京都、琵琶湖にもいるとのこと。「都に住まぬ都鳥」も地球温暖化が・・・。

904 第十 羇旅歌 駿河の國宇都の山に逢へる人につけて京にふみ遣はしける 在原業平朝臣

駿河なる宇都の山邊のうつつにも夢にも人に逢はぬなりけり

1614 第十七 雜歌中 五月の晦に富士の山の雪白く降れるを見てよみ侍りける 在原業平朝臣

時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ

 

十六 段 紀有常を貧乏な貴族として、業平が夜着や寝具などを送ったことに感激して、有常が礼状に添えて。いくら貧乏でも貴族だし・・・

1496 第十六 雜歌上 業平朝臣の装束遣はして侍りけるに 紀有常朝臣

秋や來る露やまがふと思ふまであるは涙の降るにぞありける

 

二十一 段 ともによみ人知らずの歌を業平の歌と結びつけて

1361 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

忘るらむとおもふこころの疑にありしよりけにものぞ悲しき

1369 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

中空に立ちゐぬ雲の跡もなく身のはかなくもなりぬべきかな

 

二十二 段 別れても好きな人から・・・

1362 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

憂きながら人をばえしも忘れねばかつ恨みつつなほぞ戀しき

 

二十三 段 「筒井つの」で有名な幼なじみとの恋。金の切れ目で金色夜叉な男。二股をかけて飯を盛ったくらいで。ちなみに1368の歌は万葉集よみ人知らずです。

1368 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

君があたり見つつを居らむ伊駒山雲なかくしそ雨は降るとも

1207 第十三 戀歌三 題しらず よみ人知らず

君來むといひし夜毎に過ぎぬれば頼まぬ物の戀ひつつぞ經る

二十六 段 詞書ほどの長さですが。五条の辺りの袖が湊って何?

1357 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

おもほえず袖に湊の騷ぐかなもろこし舟の寄りしばかりに

 

二十九 段 詞書ほどの長さですが

105 第二 春下 題しらず 在原業平朝臣

花にあかぬ歎はいつもせしかども今日の今宵に似る時は無し

 

三十三 段 山口女王が大伴家持に送った万葉集の恋歌を借用して。四五句は「思ふか君が忘れかねつる」

1377 第十五 戀歌三 中納言家持に遣はしける 山口女王

あしべより滿ち來る汐のいやましに思ふか君が忘れかねつる

 

四十二 段 浮気性の女性を好きになると、他の男が通ったのではと心配してしまうのは男の性?

1408 第十五 戀歌五 題しらず 在原業平朝臣

出でていにし跡だにいまだ變らぬに誰が通路と今はなるらむ

 

六十五 段 禁断の恋は、お払いしても治らない。ついには身を滅ぼすはめに。

1151 第十三 戀歌三 題しらず 在原業平朝臣

思ふには忍ぶる事ぞまけにける逢ふにしかへばさもあらばあれ

 

七十 段 六十九段で別れた斎宮に仕える童に、男女の会う機会を問うのはちなみにミルメとは海松布と書いて海草のこと

1080 第十一 戀歌一 題しらず 在原業平朝臣

みるめ刈るかたやいづくぞ棹さしてわれにへよ海人の釣舟

 

七十二 段 去っていく男への女の恨みは、怖い。ちなみに伊勢の国の女は斎宮?

1432 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

大淀の松はつらくもあらなくにうらみてのみもかへる波かな

 

八十六 段 昔付き合って、別れた人と偶然ばったり、同じ職場となってしまった。男はよりを戻そうと歌を送るが・・。

1365 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

今までに忘れぬ人は世にもあらじおのがさまざま年の經ぬれば

 

八十七 段 前段は、神戸の布引の滝の歌を兄行平の歌後半は神戸に住んでいた時の歌。

1588 第十七 雑歌中 題しらず 在原業平朝臣

葦の屋の灘の鹽やき暇なみ黄楊のをぐしもささず來にけり

1649 第十七 雑歌中 布引の瀧見にまかりて 中納言行平

わが世をば今日か明日かと待つかひの涙の瀧といづれ高けむ

1589 第十七 雑歌中 題しらず 在原業平朝臣

晴るる夜の星か河邊の螢かもわが住む方に海人のたく火か

 

百八 段 紀貫之の歌。人の心を恨んで。ただし、岩は磯となっている。

1040 第十一 戀歌一 題しらず 紀貫之

風吹けばとはに波こす磯なれやわがころも手の乾く時なし

 

百十七 段 平城天皇が住吉に詣でたとき、住吉神が現形して神託した歌。詞書でも「伊勢物語に」とある。

1857 第十九 神祇歌 伊勢物語に住吉に行幸の時おほん神現形し給ひてとしるせり

むつまじと君はしらなみ瑞垣の久しき世より祝ひ初めてき

 

百二十二 段 昔結婚の約束を破られたのに、再会したので、女に歌をつかわしたものの音沙汰無し・・・。苦い思い出。

1367 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

山城の井手の玉水手に汲みてたのみしかひもなき世なりけり

 

百三十 段三十一段と同じ歌です。定家本にはありませんが。

1369 第十五 戀歌五 題しらず よみ人知らず

中空に立ちゐぬ雲の跡もなく身のはかなくもなりぬべきかな

 

八十三 段 業平の歌(古今集)に惟喬親王の返歌が撰歌されましたので。 

1718 第十八 雑歌下 世を背きて小野といふ所に住み侍りけるころ業平の朝臣雪のいと高く降り積みたるをかき分けてもうで夾て夢かとぞ思ふ思ひきやとよみ侍りけるに 惟喬親王

夢かとも何かおもはむうき世をば背かざりけむほどぞ悔しき

 

異本 四 段七十一段 四段に業平、七十一段に万葉集よみ人知らずの歌掲載されている。

1409 第十五 戀歌五  題しらず 在原業平朝臣

梅の花香をのみ袖にとどめ置きてわが思ふ人は音づれもせぬ

911 第十  羇旅歌 題しらず よみ人知らず

神風の伊勢の濱荻をりふせてたび寝やすらむあらき濱邊に


恋歌一 伊勢物語 若紫

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新古今和歌集 第十一 戀歌一

女に遣はしける                在原業平朝臣

    春日野の

若紫の

 すりごろもしの

  ぶのみだれ

 かぎり知られず

 

読み:かすがののわかむらさきのすりごろもしのぶのみだれかぎりしられず 隠

意味:春日野の若い紫で摺った衣のような美しい貴方を拝見して、この信夫もじ摺の衣のように忍心でとても乱れております。

備考:伊勢物語 一段、古今和歌六帖

 

むかしをとこ、うゐかぶりして、ならの京、かすがの里に知るよしゝて、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。このをとこ、かいまみてけり。おもほへず、古里にいとはしたなくてありければ、心地まどひにけり。

をとこの著たりけるかりぎぬの裾を切りて、歌を書きてやる。そのをとこ、しのぶずりのかりぎぬをなむ著たりける。 

かすが野の若紫のすりごろもしのぶのみだれ限り知られず 

となむ、をいつきていひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ。 

みちのくの忍もぢずり誰ゆゑにみだれそめにし我ならなくに 

といふ歌の心ばへなり。昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。

哀傷歌 伊勢物語 芥川

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新古今和歌集 第八 哀傷歌

  題しらず

            在原業平朝臣

白玉か

 何ぞ

  と人の問ひしとき

露とこたへて

   消な

    ましも

      のを

 

読み;しらたまかなにぞとひとのといしときつゆとこたえてけなましものを

意味:あれは真珠の玉ですかと聞かれて露ですよと答えた人は今はもう露のように消えてしまった。そんなことならもっと夢のある違うように言うべきだった。

備考:伊勢物語第六段

 

むかし、をとこありけり。女のえ得まじかりけるを、年を經てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに夾けり。芥川といふ河をゐていきければ、草の上におきたりける露をかれは何ぞとなむをとこに問ひける。ゆくさき多く夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる藏に、女をば奧におし入れて、をとこ、ゆみやなぐひを負ひて戸口に居り。はや夜も明けなむと思ひつゝゐたりけるに、鬼はや一口に食いてけり。

あなやといひけれど、神鳴るさわぎにえ聞かざりけり。やう/\夜も明けゆくに、見ればゐて夾し女もなし。足ずりをして泣けどもかひなし。 

白玉かなにぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを

これは、二條の后のいとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひていでたりけるを、御せうと堀河のおとゞ、太郎國經の大納言、まだ下らふにて内へまゐり給ふに、いみじう泣く人あるをきゝつけて、とゞめてとりかへし給うてけり。それを鬼とはいふなりけり。またいと若うて、后のたゞにおはしける時とや。

羇旅歌 伊勢物語 浅間山

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新古今和歌集第十羇旅歌

 東の方に罷りけるに淺間の嶽に立つ煙の立つを見てよめる

                    在原業平朝臣

信濃なる淺間

    の嶽に

      立つ

 けぶり

をちこち

  人の見やは

        とがめぬ


読み:しなのなるあさまのたけにたつけむりおちこちひとのみやはとがめぬ 隠

意味:信濃の浅間山の噴煙を近隣の人はなぜ咎めないのだろうか。恋の想いは静かにしているのに、あんなに自分の意思を表に出しているのは浅ましいと。

備考:伊勢物語 八段

 

むかし、をとこありけり。

京や住み憂かりけむ、あづまの方に行きて住み所もとむとて、友とする人ひとりふたりして行きけり。 

信濃の國、淺間の嶽にけぶりの立つを見て、

信濃なる淺間の嶽にたつ煙をちこちの人の見やはとがめむ

羇旅歌 伊勢物語 蔦の細道

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新古今和歌集 第十羇旅歌

駿河の國宇都の山に逢へる人につけて京にふみ遣はしける

         在原業平朝臣

          駿河

     なる宇都の

  山邊のうつつにも

夢にも人に逢はぬなりけり

 

読み:するがなるうつのやまべのうつつにもゆめにもひとにあわぬなりけり 隠

意味:遠い駿河の宇津の山に来て、現実でも夢でも貴方にお会いするなんて、難しいのは、貴方が薄情になったからでしょうか。

備考:伊勢物語 九段

 

むかし、をとこありけり。
 
そのをとこ、身をえうなき物に思ひなして、京にはあらじ、あづまの方に住むべき國求めにとて行きけり。

もとより友とする人ひとりふたりしていきけり。道知れる人もなくて、まどひいきけり。 

三河の國、やつはしといふ所にいたりぬ。そこをやつはしといひけるは、水ゆく河のくもでなれば、橋を八つわたせるによりてなむやつはしといひける。その澤のほとりの木の蔭にて下りゐて、かれいひ食ひけり。 

その澤にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、

かきつばたといふいつもじを句の上にすゑて、旅の心よめといひければ、よめる。 

から衣きつゝなれにしつましあればはる/\きぬる旅をしぞ思ふ 

とよめりければ、みな人、かれいひのうへに涙おとしてほとびにけり。 


行き/\て、駿河の國にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、つたかへでは茂り、もの心ぼそく、すゞろなるめを見ることと思ふに、す行者あひたり。

かゝる道はいかでかいまする

といふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、ふみ書きてつく。 

駿河なる宇津の山べのうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり

雑歌中 伊勢物語 富士残雪

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新古今和歌集 第十七雜歌中

五月の晦に富士の山の雪白く降れるを見てよみ侍りける

                   在原業平朝臣

時知らぬ

      山は富士の嶺

  いつと

   てか鹿の

        子まだら

   に雪の降るらむ

 

読み:ときしらぬやまはふじのねいつとてかかのこまだらにゆきのふるらむ

意味:五月末というのに、季節をわきまえない山である富士の嶺では、鹿の子のまだら模様のようにまだ雪が残っている。

備考:伊勢物語 九段、古今和歌六帖 「降るらむ」を「まだ雪が残っている」と訳した。

 

富士の山を見れば、さつきのつごもりに、雪いと白う降れり。 

時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ 

その山は、こゝにたとへれば、ひえの山をはたちばかり重ねあげたらむほどして、なりは鹽尻のやうになむありける。

 
なほ行き/\て、武蔵の國と下つ總の國との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりにむれゐて思ひやれば、限りなく遠くも來にけるかなとわびあへるに、渡守、はや舟に乗れ、日も暮れぬといふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。

さる折りしも、白き鳥のはしと脚と赤き、鴫の大きさなる、水のうへに遊びつゝ魚をくふ。京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡守に問ひければ、これなむ宮こ鳥といふをきゝて、 

名にし負はばいざこととはむ宮こ鳥わが思ふ人はありやなしやと 

とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

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