日本古典全集刊行
校訂:正宗敦夫
発行:伊藤書店、日本古典全集刊行会
初版:昭和20年12月10日
底本:正保版流布印本
校訂:八代集抄本、柳瀬本、隠岐本、前田侯爵本
特徴
撰者名、隠岐削除歌は、柳瀬本による。
いづくにもこよひの
月をみる人の
こころやおなじ
そらにすむらむ
金葉集初度本265、二奏本182 、三奏本174 巻第三 秋部
翫明月といふ事をよめる 民部卿忠教
いづくにも今宵の月を見る人の心やおなじ空にすむらむ
藤原忠教(承保三年-永治元年)京極師実男。正二位大納言中宮大夫
うの花をちり
にしむめにまかへ
てや
なつのかきねに
うぐいすのな
く
拾遺集巻第二夏歌
山里の卯の花にうくひすのなき侍りけるを
平公誠
卯の花をちりにしむめにまかへてや夏のかきねに鴬のなく
平公誠(生没年未詳)平元平男。従五位下周防守。
天山不辨何年
雪合浦応迷舊
日珠
あまのはらふりさけみれ
ばかすがなるみかさの
やまにいでしつきかも
和漢朗詠集 月
天山に弁(わきま)へず何れの年の雪ぞ。
合浦にはまさに迷ひぬべし旧日の珠に。
禁庭翫月 三統理平
古今集 羇旅歌
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも
平成27年12月13日 點八九/十四枚
新古今和歌集 巻第十五恋歌五
よみ人知らず
君があたり
見つゝを居らむ
生駒山
雲なかくしそ
雨は降るとも
読み:きみがあたりみつつをおらむいこまやまくもなかくしそあめはふるとも
意味:あの人がいる大和の国の方をみていたいので、生駒山を雲で隠さないでください。例え雨が降ったとしても。
万葉集 第巻十二 3032
寄物陳思 君之當 見乍母将居 伊駒山 雲莫蒙 雨者雖零
君があたり見つつも居らむ生駒山雲なたなびき雨は降るとも
写真:生駒市
学研北生駒駅四季の森公園
生駒山麓公園万葉の道
簡齋詩集
卷第二十五
羅江二絶
其二
山翁見客亦欣然
好語重重意不傳
行過竹籬逢細雨
眼明雙鷺立青田
平成27年12月13日 點八九/十四枚
新古今和歌集 巻第一春歌上
大空は木毎の
匂ひにかすみつヽ
くもりもはてぬ
春のよの月
守覺法親王家五十首歌に
藤原定家朝臣
大空は梅のにほひにかすみつつくもりもはてぬ春の夜の月
読み:おおぞらはうめのにほひにかすみつつくもりもはてぬはるのよのつき
平成27年12月13日 點八九/十四枚
駒とめて袖
うち払ふ影も
なし
さのヽのわたりの
雪のゆふ
暮
新古今和歌集 巻第六冬歌
百首歌奉りしとき 藤原定家朝臣
駒とめて袖うち払ふかげもなし佐野のわたりの雪のゆふぐれ
読み:こまとめてそでうちはらふかげもなしさののわたりのゆきのゆふぐれ
備考:佐野は奈良県桜井市。 本歌 万葉集 巻三 長忌寸奧麻呂 苦しくも降りくる雨か 三輪が崎佐野の渡りに家もあらなくに 正治二年後鳥羽院初度百首
清原元輔 松風 印
秋のヽの
はぎのにしきを
ふるさとに
しかのねながら
うつしてし哉
秋の野の萩の錦を古里に鹿の音ながら移してしがな
読み:あきのののはぎのにしきをふるさとにしかのねなからうつしてしがな
備考:元輔集、前十五番歌合、三十六人撰。前十五番では三句は「我が宿に」
39.3cm×49cm
平成27年12月12日 參