隠岐本合点とは、承久の変の後、後鳥羽院は隠岐に流され、新古今集の約二千首の内、約四百首を破棄した所謂隠岐本の印であり、棄除した歌、残置した歌に合点があるもの、その両方があるもの、そして残された歌だけのものの四種類がある。
それは、後鳥羽院の嗜好を示している。これは、有る意味竟宴後に切り入れを命じた歌と同じである。
慈円歌の九十二首の場合、かなり隠岐本に残されているが、勿論これも異本により差違がある。(惣持坊行助筆参照)
隠岐本の内、最も信頼性が有るのは、残された歌のみの冷泉家時雨亭文庫本ではあるが、巻第一~十までの上巻のみである。
時雨亭文庫本の慈円隠岐本歌は、
春歌上 1首
夏歌 6首
秋歌上 6首
秋歌下 7首
冬歌 8首
哀傷歌 7首
羇旅歌 2首
の37首である。
巻第十一~二十は、各異本により異なり、合点印が全く無い巻も有る。
烏丸本は、付箋によるが、長い歴史の中で剥がれてしまった歌もある。
これを久保田淳が集計した全評釈第九巻によると
烏丸本
恋歌一 0首
恋歌三 0首
恋歌四 0首
恋歌五 0首
雑歌上 5首
雑歌中 1首
雑歌下 8首
神祇歌 4首
釈教歌 4首
の23首となる。
これに、同じく久保田氏が集計した小島吉雄氏の新古今和歌集の研究で加えた歌は、
恋歌四 +3首
恋歌五 +1首
+4首で27首。
同じく穂久邇文庫蔵伝二条為氏本では
恋歌一 +1首
雑歌上 +2首
雑歌中 +4首
雑歌下 +6首
神祇歌 +1首
釈教歌 +3首
+17首計43首となる。
その他柳瀬本では
恋歌一 1首
恋歌三 0首
恋歌四 3首
恋歌五 1首
雑歌上~釈教歌 闕
の一部闕となっているが、5首。
又、小宮本では
恋歌一 1首
恋歌三 0首
恋歌四 2首
恋歌五 1首
雑歌上 7首
雑歌中 5首
雑歌下 13首
神祇歌 8首
釈教歌 8首
の45首となる。
為氏本と小宮本では、
神祇歌 3首
釈教歌 1首
が為氏本には合点が無いが、小宮本にはあり、
恋歌四 1首
雑歌下 1首
が、為氏本には有るが、小宮本には無い。
為氏本、柳瀬本と小宮本に共通して合点が無いのは、
95春歌上 建仁元年仙洞句題五十首
942羇旅歌 六百番歌合
1223恋歌三 六百番歌合
1311恋歌四 六百番歌合
1656雑歌中 南海漁夫北山樵客百首歌合
1669雑歌中 南海漁夫北山樵客百首歌合
1745雑歌下 慈鎮和尚自歌合
1826雑歌下 南海漁夫北山樵客百首歌合
となっている。
参考
新古今和歌集 全評釈第九巻 久保田淳箸 講談社
隠岐本新古今和歌集 三矢重松、折口信夫、武田祐吉箸 岡書院
新古今和歌集 日本古典文学体系 28久松潜一、山崎敏夫、後藤重郎 校注 岩波書店