あはれなりむかしの人をおもふ
には
きのふののべにみゆき
せましや
ひきかへてのべのけしきは
みえしかど
むかしをこふるまつは
なかりき
はるくればそでのこほり(のおそけ
ればゆきに
つゝめるうぐひすのこ
え)
新古今和歌集巻第十六 雑歌上
円融院位去り給ひてのち船岡に子日し給ひける
にまゐりて朝にたてまつりける
一条左大臣
あはれなりむかしの人を思ふには昨日の野辺に御幸せましや
御かへし
円融院御歌
引きかへて野辺の気色は見えしかど昔を恋ふる松はなかりき
月のあかく侍りける夜袖の濡れたりけるを
大僧正行尊
春来れば袖の氷も解けにけり漏り来る月のやどるばかりに
鶯を
菅贈太政大臣
谷深み春の光のおそければ雪につつめるうぐひすの声
読み:
あはれなりむかしのひとをおもうには
きのうののべにみゆきせましや
ひきかえてのべのけしきはみえしかど
むかしをこうるまつはなかりき
はるくればそでのこおりもとけにけり
もりくるつきのやどるばかりに 隠
たにふかみはるのひかりのおそければ
ゆきにつつめるうぐひすのこえ 隠
備考
一条左大臣:源雅信
子日御幸:永観三年(985年)二月十三日
行尊歌:定家十体麗体
菅贈太政大臣:菅原道真
道真歌:本説は、鶏既鳴兮忠臣待旦鶯未出兮遺賢在谷(和漢朗詠集 鴬 鳳為王賦 賈島)
平成28年9月17日 點伍