むらさきのくもにもあらではるがすみ
たなびく山の
かひはなにぞも
みちのべのくち木のやなぎ
はるくれば
あはれむかしとしの
ばれぞする
むかしみし
はるはむかしのはるながら
わがみ
ひとつのあらずもあるかな
御かへし
円融院御歌
紫の雲にもあらで春がすみたなびく山のかひはなにぞも
柳を
菅贈太政大臣
道の辺の朽木の柳春来ればあはれむかしとしのばれぞする
題しらず
清原深養父
昔見し春は昔の春ながらわが身ひとつのあらずもあるかな
読み:
むらさきのくもにもあらではるがすみ
たなびくやまのかひはなにぞも
みちのべのくちきのやなぎはるくれば
あわれむかしとしのばれぞする
むかしみしはるはむかしのはるながら
わがみひとつのあらずもあるかな
備考:
御かへし 東三条入道前摂政太政大臣(兼家)に対する返歌。
紫の雲 藤壺(皇后)の比喩。兼家息女の藤原詮子は入内し、一条天皇を生むが、関白藤原頼忠の女遵子に正暦元年(990年)に皇后の座を奪われたことで、父兼家と共に天皇を恨んで里邸の東三条邸にこもり、たびたびの召還にも応じなかった。
道真歌は、定家十体の幽玄様。
平成28年9月17日 點伍