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Channel: 新古今和歌集の部屋
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美濃の家づと 巻の一 夏歌7

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題しらず        西行

道のべにし水ながるゝ柳かげしばしとてこそ立どまりつれ

しばしとおもひてこそ立どまりたるを、あまりすゞしさに、

えたちさらで、思はず時をうつしたることよと也。こそといひ、

つれといへるにて、その意見たり。


よられつる野もせの草のかぎろひて涼しくくもる夕立の空

下句詞めでたし。 初句は、夏の暑き日影に、草葉のよれ

しゞみたるをいふ。 かげろひてといへるにて、はじめ日影の甚

しかりしことしられ、すゞしく曇るといへるにて、おのづから、

草葉のもとのごとくのびて、こゝちよげなるほど見たり。

夏月          従三位頼政

庭の面はまだかわかぬに夕立の空さりげなくすめる月哉

空さりげなく、おもしろし。夕立のしたる名残も見えず、清く

すめるなり。

百首哥中に       式子内親王


夕立の雲もとまらぬ夏の日のかたぶく山に日ぐらしのこゑ

夕立の雲も、残りなく晴て、とまらず、日もとまらずかたぶく、

といふ趣意にやあらん。 下句いやしきふり也。玉葉集風

雅集に、此格おほし。此内親王の御哥に、√霧のあなたに

初厂の聲共有。又かの二ツの集の日に、√野べは霞に鴬の聲、

√尾花が風に庭の月影。などいへるは、殊にいやし。これらのに°もじ

は、√かたぶく山に、√霧のあなたに。などあるに°とは異して、これも

ありかれもありと、物をならべあぐる間におけるなれば、いと/\

いやしきなり。

百首歌奉りし時       摂政


秋ちかきけしきの杜になくせみの涙の霧や下葉そむらん

秋ちかきと、下葉そむと、かけ合たり。 此涙を、紅涙也と

いへる説はわろし。よのつねの露も、木の葉を染るはつねのこと也。

五十首哥奉りし時

ほたるとぶ野沢にしげるあしの根のよな/\下にかよふ秋風

四の句、よは葦の縁。下にかよふは、根のうけ合なり。

百首哥の中に      式子内親王

たそがれの軒端の萩にともすればほにいでぬ秋ぞ下にことゝふ

 


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