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Channel: 新古今和歌集の部屋
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美濃の家づと 二の巻 秋歌下4

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秋の御哥とて      太上天皇御製

さびしさはみ山の秋の朝ぐもりきりにしをるゝ槙の下露

此御初句は、云々槙の下露のさびしさと、終りにおくと

同じ心にて,一ツの格なり.此格を心得ぬ人は,うたがふこと也.

川霧          通光卿

明ぼのや川せの波のたかせ舩くだすか人のそでの秋霧

めでたし。下句詞めでたし。二三の句は、舩をくだせば、

舩にあたる波の音の高きをいふ。 人の袖の秋霧とは、

經信卿母の哥に、√明ぬるか川せの霧のたえ/"\に遠方人の

袖の見ゆるは、とあるをとりて、花やかによみなせる也。されば

此句は,袖のたえ/"\に見ゆる意なるを,其詞をば,本哥にゆ

づりて,人の袖のといふ詞にて,本哥を思はせたる物なり.

然るを或抄に、袖は霧にかくれてあるといふことなりと

註せるは、いとをさなし。一首の意は、波の音高く聞え、又

霧に人の袖のたえ/"\見ゆるにつきて、高瀬舟をくだ

すにやと思へるさまなり。

題しらず        俊成卿女

吹まよふ雲ゐをわたる初かりのつばさにならすよも秋風

吹まよふと、よものと、相てらしたり。

詩に合せし哥の中に山路秋行

            家隆朝臣

秋風の袖に吹まく峯の雲をつばさにかけて鴈もなく也

上句、山中をゆく時のさま也。三の句もじあまり、きゝぐる

し。下句は、鴈もつばさにかけて鳴也と心得べし。さて

鴈も鳴といへるにて、我ガわびしきほどをあらはせり。

五十首哥奉りし時菊籬月 宮内卿

霜をまつまがきの菊のよひの間におきまよふ色は山端の月

菊は,一さかり過て,霜のおけば,又一さかり,うつろひざかりとて

ある故に、霜をまつとはいふなり。よひの間といふも、霜

をまつによしあり。山のはといふも、よひの間により有。

すべて哥は,かくのごとく,何れの詞も,たがひによしあるやう

によみとゝのへたるがよき也。おきまよふ色とは、霜のおき

たる色にまがふをいふ。 此哥ま°もじ五ツ有。

千五百番哥合に     慈圓大僧正

秋をへてあはれも霧もふか草の里とふ物はうづらなりけり

下句、うづらならでは、おとづるゝ人もなき意なり。

            通光卿

入日さすふもとの尾花うちなびきたが秋風にうづら鳴らん

下句詞よろし。下句の心は、鶉のなくは、たが心の秋風

を、うき物に思ひて鳴らんと也。然るに上句は、たゞけしき

ばかりをいひて、下句にかけ合たる意なし。いかゞ。古き

抄に,下句を,秋はたが秋ぞ,汝が時分にてはなきかと,とゞめたる

なりといへるは、ひがごとなり。

 

書き込み

※枠外(明ぼのやと吹まよふの間に入る)

堀川院御時百首歌奉リケル

ニ露ヲヨメル

  權大納言公實

麓をば宇治の川ぎり立

こめて雲井にみゆる朝日

山かな(0494)

 題しらず  曽祢好忠

山里にきりのまがきの

隔てずは遠方人の袖

もみてまし(0495)

    清原深養父

なく雁の音をのみぞきく

小倉山きり立ちはるゝ

時しなケれば(0496)

      人麿

垣ほなる荻の葉そよぎ

松風の吹なるなべに

雁ぞなくなる(0497)


次頁

秋風に山とびこゆる

雁のいやとほざかり雲

がくれつゝ(0498)

   凡河内躬恒

初かりの羽風すゞしく

なるなべにたれか旅寝の

衣かへさぬ(0499)

   読人しらず

雁がねは風にきほひて

すぐれども我待人のこと

づてもなし(0500)

   西行法師

よこ雲の風にわかるゝ

東雲に山とびこゆる

初かりのこゑ(0501)

白雲をつばさにかけて

ゆく雁の門田のおもの

友したふなる(0502)

五十首歌奉りしとき

目前聞雁といふことを

   慈円

大江山かたぶくつきのかげ

さえて鳥羽田のおもに

おつる雁がね(0503)

次頁

 題しらず

     朝恵法師

むら雨や雁の羽風には

れぬらん声きく空に

すめる月かげ

 

※枠外(霜をまつと秋をへての間)

 鳥羽院御時内裏より菊をめしけるに奉るとて結びつけ侍りける 花園左大臣室

九重にうつろひぬとも菊

のはな元の籬をおもひ

忘るな(0508)

   権中納言定頼

今よりは又さく花もなき

ものをいたくなおきそ

菊の上のつゆ(0509)

 かれ行野辺のきり/\を

    中務具平親王

松風にしをるゝ野べの花

よりも虫のねいたく枯に

けるかな(0510)

 題しらず 大江嘉言

寝覚する袖さへさむく

秋のよの嵐ふくなり

松虫のこゑ

 

※吹まよふ

風ノオビタヾシク吹クヲ云フ         馴

※霜をまつ

              シモオキタル色ニマギレ


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