最勝四天王院の障子に宇治川かきたる所
太上天皇御製
はし姫のかたしき衣さむしろにまつ夜むなしき宇治の明ぼの
慈圓大僧正
あじろぎにいさよふ波の音ふけてひとりやねぬるうぢの橋姫
冬の意見えず。
百首哥の中に 式子内親王
見るまゝに冬は來にけり鴨のゐる入江のみぎはうすごほりつゝ
摂政家哥合に湖上冬月 家隆朝臣
しがの浦や遠ざかりゆく波間よりこほりて出る有明の月
√さよふくるまゝにみぎはやこほるらん云々。 氷りて遠
ざかり行波間より、月もこほりていづる也。
守覚法親王家五十首哥に 俊成卿
ひとり見る池のこほりにすむ月のやがて袖にもうつりぬるかな
袖にうつるとは、影のさすことゝ、池により袖へうつるとをかねて
いへり。ひとり見る故に、あはれをもよほして、涙のかゝよし
なり。 さて、此哥、氷といへるのみにて、氷のあへしらひもな
く、すべて冬のさま見えず。ただ秋の月なるはいかゞ。
五十首哥奉りし時 摂政
月ぞすむたれかはこゝにきの国や吹上のちどりひとりなくなり
初句ぞ°もじ、かなへりとも聞えず。 三の句、來て見むといは
では、月の詮なければ、たゞきの国やとのみにては、ことたらず。
千鳥は、数多くむれゐる物なれば、ひとりといふこと、似つかはしからず。
最勝四天王御障子に鳴海浦かきたる所
秀能
風ふけばよそになるみのかた思ひおもはぬ波になく千鳥かな
二の句、風にふかれて、よそになり行と、恋のうへの契の
よそにうつれるとをかねたり。 三の句、泻といひかけ
たるなり。 四の句も、風にふかれて、思はぬ波のうへに
鳴ク意と、かた思ひにて、人の我を思はぬとをかねたり。
おなじところを 通光卿
浦人の日もゆふぐれになるみがたかへる袖より千鳥なくなり
一二のつゞきいかゞ。初句は、四の句の上にあること意也。 下句も
おかしからず。
文治六年女御入内屏風に 季經卿
風さゆるとしまが磯のむらちどりたちゐは波の心なりけり
土佐日記に云々。 下句おかしからず。
※ さよふくる 後拾遺和歌集巻第六 冬歌 快覚
小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀のうら波
※土佐日記に 不明