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Channel: 新古今和歌集の部屋
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校正七部集 猿蓑 巻之二 3 蔵書

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   大和紀伊のさかひはてなし坂にて

   往来の巡礼をとゝめて奉加すゝめ

   けれは料足つゝみたる紙のはしに書つけ侍る

つゝくりもはてなし坂や五月 雨  去来

髪剃や 一夜に精て 五 月雨  凡兆

日の 道や 葵傾く 五 月 雨  芭蕉

縫物や 着もせてよこす 五月雨  羽紅

   七十余の老醫みまかりけるに弟子共

   こそりてなくまゝ予にいたみの句乞

   ける。その老醫いまそかりし時も

   さらに見しれる人にあらさりけれは哀

   にも思ひよらすして古来まれなる年に

   こそといへととかくゆるさゝりけれは

六尺も 力おとしや 五 月 雨  其角

百 姓も 麦に取つく 茶摘哥   去来

しからきや茶山しに行 夫婦つれ  正秀
                膳所
つかみ合子共のたけや 麦 畠   游力

   孫を◯して

麦藁の 家してやらん 雨 蛙   智月
                江戸
麦出来て 鰹 を 喰ふ 山家哉  花紅

   しら川の関こえて

風流の はしめや奥の 田植うた  芭蕉

   出羽の◎上を過ぎて

眉掃を面影にして 紅粉 の花   仝

   法隆寺開帳南無佛の太子を拝す

御袴のはつれなつかし紅粉の花   千邦
               伊賀
田の 畝の豆つたひ行 蛍かな   万乎

   膳所曲水之楼にて

蛍火や吹とはされて 鳰のやみ   去来

   勢田の蛍見二句

闇の夜や 子共泣出す 蛍ふね   凡兆

ほたる見や舩頭酔ておほつかな   芭蕉

   三熊野へ詣ける時
               長サキ
蛍火や こゝおそろしき八鬼尾谷  田上尼

あなかちに鵜とせりあはぬ鴎かな   尚白

草むらや 百合は中々はなの 㒵  半残

 

※◯字は不明文字。2つ目の◎字は出羽の最上を過ぎた尾花沢での作である。

つづくりもはてなしさかやさつきあめ  去来(五月雨:夏) かみそりやいちやにさびてさつきあめ  凡兆(五月雨:夏) ひのみちやあふひかたむくさつきあめ  芭蕉(五月雨:夏) ぬひものやきもせでよごすさつきあめ  羽紅(五月雨:夏) ろくしやくもちからおとしやさつきあめ 其角(五月雨:夏)  ※老医 村田忠庵とある。  ※六尺 駕籠かきなどの奉公人。七十余、六尺、五月雨。 ひやくしやうもむぎにとりつくちやつみうた 去来(茶摘歌:春) しがらきやちややましにゆくふうふづれ 正秀(茶山:夏) つかみあふこどものたけやむぎばたけ  游刀(麦畠:夏)  ※游力は游刀の誤字 むぎわらのいへしてやらんあまがへる  智月(麦藁:夏) むぎできてかつをまでくふやまがかな  花紅(麦:夏) ふうりうのはじめやおくのたうゑうた  芭蕉(田植歌:夏)  ※奥の細道 まゆはきをおもかげにしてべにのはな  芭蕉(紅粉花:夏)  ※奥の細道 おはかまのはづれなつかしべにのはな  千邦(紅粉花:夏) たのうねのまめづたひゆくほたるかな  万乎(蛍:夏)  ※凡兆の句を、去来は猿蓑の採択を主張したが、凡兆が拒否して、芭蕉が添削して万乎作とした。(去来抄) ほたるびやふきとばされてにほのやみ  去来(蛍火:夏) やみのよやこどもなきだすほたるぶね  凡兆(蛍舟:夏) ほたるみやせんどうゑうておぼつかな  芭蕉(蛍見:夏)  ※元禄三年夏、幻住庵の頃の作。 ほたるびやここおそろしきやきをだに  田上尼(蛍火:夏)  ※八鬼尾谷 十津川郷から熊野本宮へ出る果無峠付近の八木尾。 あながちにうとせりあはぬかもめかな  尚白(鵜:雑)  ※鵜は無季。鴎は冬季。鵜の黒、鴎の白の競り合わないという意味。 くさむらやゆりはなかなかはなのかほ  半残(百合:夏)

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