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Channel: 新古今和歌集の部屋
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自讃歌 後鳥羽院 安政三年書写不明本 蔵書

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   太上天皇

桜さくとを山鳥のしだりをの

 なが/"\し日もあかぬ色かな

露は袖に物おもふ頃はさぞなおく

 かならず秋の習ひならねど

おもひ出るおりたく柴の夕けぶり

 むすぶもうれしわすれがたみに

なき人のかたみの雲やしほるらん

 ゆふべの雨に色はみへねど

見るまゝに山風あらくしつるめり

 みやこもいまや夜ざむ成らん

我恋はまきの下葉にもる時雨

 ぬるとも袖のいろにいでめや

袖の露もあらぬ色にぞ消かへる

 うつればかはるなげきせしまに

おほ空に契るおもひの年も
           へぬ
 月日もうけよゆくすゑの
           そら

ながめばや神路の山に雲消て

 ゆふべの空にいでむ月かげ

みづがきやわが世のはじめ契置て

 そのことの葉を神やうけけん

 

 

新古今和歌集
巻第二 春歌下
 釋阿和歌所にて九十の賀し侍りしをり
 屏風に山に櫻かきたるところを
                 太上天皇
さくら咲く遠山鳥のしだり尾のながながし日もあかぬ色かな

よみ:さくらさくとおやまどりのしだりおのながながしひもあかぬいろかな 選者無 隠

意味:遠くの山に咲く桜が、山鳥の垂れる尾のように長くなっていく春の日でも見飽きない景色のように、、貴方の歌は、歌聖人麿や紀貫之、友則のように見飽きることがありません。

作者:後鳥羽天皇ごとば1180~1239譲位後三代院政をしく。承久の変により隠岐に流される。多芸多才で、新古今和歌集の院宣を発し、撰者に撰ばせた後更に撰ぶ。

備考:柿本人麻呂と紀友則、紀貫之の本歌取り。建仁三年(1203)11月23日俊成が九十歳になった時に和歌所で祝賀会が開催され、屏風歌として歌われた。時代不同歌合、 八代抄、新三十六人歌合、美濃の家苞、常縁原撰本新古今和歌集聞書、新古今抜書抄、新古今注、九代抄、九代集抄、新古今和歌集抄出聞書(陽明文庫)

本歌:

足引の山鳥の尾のしだり尾のながながしよを一人かも寝む(拾遺集 柿本人麻呂)

わが心春の山辺にあくがれてながながし日を今日も暮らしつ(春歌上 紀貫之 私説)

春霞たなびく山のさくら花見れどもあかぬ君にもあるかな(古今集恋歌四 紀友則 私説)

 

巻第五 秋歌下
 秋歌の中に
                 太上天皇
露は袖に物思ふ頃はさぞな置くかならず秋のならひならねど

よみ:つゆはそでにものもうころはさぞなおくかならずあきのならいならねど 選者無 隠削

意味:露のような涙は物思いする頃はやはり袖に置くものだ。必ず秋の習いではないが、秋は物思いが増えるからなのだろう。

備考:元久元年五月春日社奉納三十首。

 

巻第八 哀傷歌
 十月ばかり水無月に侍りしころ前大僧
 正慈圓のもとへぬれてしぐれのなど申
 し遣はして次の年の神無月に無常の歌
 あまたよみて遣はし侍りける中に
                 太上天皇
思ひ出づる折りたく柴の夕煙むせぶもうれし忘れがたみに

よみ:おもいづるおりたくしばのゆうけぶりむすぶもうれしわすれがたみに 選者無 隠

意味:尾張が亡くなってちょうど1年の彼女を思い出す折に焚く柴の夕煙に咽び泣くも、尾張の忘れ形見だと思うと嬉しくなるものだ。

備考:元久元年十月、愛した女房尾張が死去、その一年後の詠。濡れて時雨の 何と又忘れて過ぐる袖の上に濡れて時雨の驚かすらむ(家長日記)。新井白石の折たく柴の記の本歌。

 

 雨中無常といふことを
                 太上天皇
亡き人のかたみの雲やしぐるらむゆふべの雨にいろはみえねど

よみ:なきひとのかたみのくもやしぐるらむゆうべのあめにいろはみえねど 選者無 隠

意味:亡き人の荼毘に付した煙の名残の雲が時雨れたのであろうか。夕べの雨にその気配は見えなかったが。

備考:建永元年七月当座歌合。

 

巻第十 羇旅歌
 熊野へまゐり侍りしに旅のこころを
                 太上天皇
見るままに山風あらくしぐるめり都もいまは夜寒なるらむ

よみ:みるままにやまかぜあらくしぐるめりみやこもいまはよざむなるらむ 選者無 隠

意味:見ているままに山風が荒く時雨て来たらしい。愛する人のいる京都では、今は夜寒の中で寂しく寝ているのだろうか。

備考:後鳥羽院は、たびたび熊野御幸を行なっているが、この詠はいつのものか不明。

 

巻第十一 戀歌一
 北野宮歌合に忍戀のこころを
                 太上天皇
わが戀はまきの下葉にもる時雨ぬるとも袖の色に出でめや

よみ:わがこいはまきのしたばにもるしぐれぬるともそでのいろにいでめや 選者無 隠

意味:私の恋は常緑樹の下葉に漏れてくる時雨のように濡れたとしても色が変わらぬように、袖に涙が落ちても赤くなって恋心を他人に知らせるようなことはしない。

備考:元久元年北野宮歌合。

本歌:新古今和歌集巻第六 冬歌 題知らず 柿本人麿(万葉集巻第十 秋雑歌)
時雨の雨まなくし降ればまきの葉も争ひかねて色づきにけり

 

巻第十四 戀歌四
 被忘戀のこころを
                 太上天皇
袖の露もあらぬ色にぞ消えかへる移ればかはる歎せしまに

よみ:そでのつゆもあらぬいろにぞきえかえるうつればかわるなげきせしまに 選者無 隠

意味:袖の露の涙は有らぬ赤色に変わって、自分の命も消えてしまいそうだ。あの人の心が私の事など忘れ、他の女へ移ってしまって、心変わりを嘆いている間に。

備考:建永元年七月当座歌合(散逸)。

 

第十八 雜歌下
 太神宮歌合に
                 太上天皇
おほぞらにちぎるおもひの年も經ぬ月日もうけよ行末の空

よみ:おおぞらにちぎるおもいのとしもへぬつきひもうけよゆくすえのそら 切

意味:大空の高天原にお住まいの天照大神との御誓願の天下太平の思いもだいぶ年を経て来ました。その長年の月や日もこの思いをお聞き届けください、この国の行く末の空を。

備考:切出歌。承元二年二月 内宮三十首。歌合とあるが間違い。

 

第十九 神祇歌
 大神宮の歌の中に
                 太上天皇
ながめばや神路の山に雲消えてゆふべの空を出でむ月かげ

よみ:ながめばやかみじのやまにくもきえてゆうべのそらをいでむつきかげ 選者無 隠削

意味:ずっと眺めていたい。神路山の邪な心の様な雲が晴れて、夕暮れの空に、大神宮の御威光を示す隈なき月が出て来た。

備考:承元二年二月  内宮三十首。

 

玉葉集 巻第二十 神祇歌
                後鳥羽院
瑞垣や我が世の始め契りおきしその言の葉を神や受けけむ


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