(ウェップリブログ 2007年12月29日)
7 惜たら夜の
源氏物語の明石帖には、明石の上と光源氏が初めて逢瀬をする場面として、父親の明石の入道の手引きで
忍びてよろしき日見て…十三日の月の花やかにさし出でたるに、たゞ惜たら夜のと聞こえたり
とあります。
この「惜たら夜の」とは
あらた夜の月と花とを同じくはあはれ知れらむ人に見せばや(後撰集 春下 源信明)
から来ていて、月と我が娘を貴方にお見せしたいという意味です。
又屋敷に向かう途中、源氏は馬に乗りながら
秋の夜の月げの駒よわが恋ふる雲居をかけれ時の間も見ん
と吟じています。秋の十三日の夜というのは書かれていますが、何月とは明確に書かれていません。
後世(室町時代)の三条西実隆の注釈本弄花抄に旧八月と書いてあるそうです。
ただ旧九月の十三夜を後の月(栗名月)と愛でる風習は宇多・醍醐時代からで、紫式部には当然の習慣かと思われます。
又、源氏が屋敷に向かう途中には、
前栽どもに虫の声を尽くしたり
とあり新9月が秋の虫の声がうるさく、旧八月説もうなずけます。
しかし前述の「惜たら夜の」と明石の入道が源氏を月見を名目に娘に会わせることで、おかしな事になってしまいます。
何故なら、二日後は仲秋の名月で、月見に誘うのであればこの日に誘うのが常識と思われます。
虫の音との矛盾に私の愚説としては
昔の暦は、月齢を基に作られたので、太陽から作られた太陽暦と毎年かなりずれます。このずれを補正するために19年に7回閏月を設けます。
従って旧暦の九月十三日が新暦の10月上旬になる事があります。
1989~2007年の九月十三日は、新暦の10月8日~11月3日になります。
ギリギリで虫の音が賑やか(夜温15℃以上となります。)
紫式部の物語という架空の話なので、そこまで厳密に考えなくともと言えばそれまでですが。
平成20年10月18日追加
この説を考えていた時は、自信はなかったが、先週コオロギがうるさいほど鳴いていました。既に後の月も終わり晩秋の色濃くなりつつある時期にもです。もちろん地球温暖化を差し引いてもと思います。