(ウェッブリブログ 2009年07月27日)
十七番 左 盛經
雲暗曉埋樵客跡 月晴夜照旅人夢
右勝 丹後
月を猶雲のよそにぞおくりける山ぢの秋はさをしかのこゑ
十八番 左 盛經
巌扉露滴苔痕白 山館蝉鳴木葉紅
右勝 丹後
あし引の山ぢ分入る苔の袖わがおく露の色は有りける
十九番 左 爲長
蝉聲滿耳商風急 猿叫斷腸巴月閑
右 雅經
立ちぬるる木の下露に鳴く鹿の聲きく時の山の夕ぐれ
廿番 左 爲長
寒雨聞鐘尋晩寺 白雲假路過秋山
右勝 雅經
吹きなるる嵐の音もたつた山秋の時雨にまがふ袖かな
廿一番 左勝 宗業
樵衣更薄嶺風響 鞭袖屢霑山雨音
右 保季
みよし野のすずわくる袖の秋の露はらはじとても嵐吹くなり
廿二番 左持 宗業
虚牝埋蹤秋霧谷 羇雌覓宿夕陽林
右 保季
ゆくものかたのめし月は霧こめてしかたにまがふ岩のかけ道
廿三番 左 頼範
旅店酒醒嵐拂面 樵谿草悴露霑衣
右勝 大納言局
鹿ぞ鳴く岩ふむ峰の苔の上におもひもわかずふる時雨かな
廿四番 左勝 頼範
岩梯峰遠蹈雲過 巌洞霧開帶月歸
右 大納言局
分けきつる跡はいくへの霧こめて今行すゑもさよの中山
廿五番 左 在高
峡猿一叫旅人思 雲雁幾行遊子心
右勝 家長
しるべせよ山とびこゆる秋の雁跡なき嶺のやへのしら雲
廿六番 左 在高
(空白)
右 家長
道すがら檜原槇の葉露おちてみ山かなしき松風のおと
廿七番 左 長兼
(空白)
右 定家
都にも今や衣をうつの山夕露はらふつたの下道
廿八番 左 長兼
(空白)
右 定家
夕づくよ木の間のかげもはつ雁のなくや雲井の峰の梯
廿九番 左
(空白)
右 蓮性
うす紅葉花におとらぬ梢かな春とおもひししがの山越
卅番 左
(空白)
右 蓮性
うつの山分行くつたの下露に物おもふ袖ぞいとどしをるる
卅一番 左
(空白)
右 有家
かこたじな時雨もる山の秋の露ぬれぬならひの袂なりとも
卅二番 左
(空白)
右 有家
みよし野の槇たつ山の秋風に衣手うすし道ふかくして
卅三番 左 資實
(空白)
右 僧正
深山ぢやいつより秋の色ならんみざりし雲の夕暮の空
卅四番 左 資實
(空白)
右 僧正
龍田山秋ゆく人の袖をみよ木木の杪はしぐれざりけり
卅五番 左 良輔
(空白)
右 通光
雁のくる山の夕霧分過ぎてしのに衣の露ぞこぼるる
卅六番 左 良輔
(空白)
右 通光
しるべせよ吉野の奥の秋の月たれかはここを又尋ぬべき
卅七番 左 摂政
(空白)
右 家隆
秋風の袖に吹きまく峰の雲を翼にかけて雁もなくなり
卅八番 左 摂政
(空白)
右 家隆
時雨ゆく山路も木葉うつろひぬ衣手かなし秋の旅人
新編 国歌大観 第5巻 角川書店
底本 内閣文庫本
校訂本 彰考館蔵本、群書類従本、後藤重郎蔵本
校訂者 後藤重郎